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一次創作、時々版権ネタ。
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ネタバレなしの感想:
シンプルながら非常に丁寧なシナリオでした。
ひとつひとつの事件は小さなものでも、
少しずつ不穏な空気が流れ込んでくる感じがドキドキします。
題材も普段カードワースではあまり見ないもので、
PLは知っているけどPCは知らないという微妙な壁も
世界観に合っていて面白かったです。
……その辺りの雰囲気をリプレイで再現できた気がしませんがorz

ネタバレ、スクショ大量につきご注意ください。


一行は遺跡らしい廃墟を慎重に進んでいく。

イズミ「……退治したゴブリンはこれで7匹か。あとどれぐらいいると思う?」
メロ「さあ、一般的な群れならばおおよそ半数といったところでしょうか」
ウォルト「それにしても、この部屋はずいぶんと散らかってるな。
調査するのも一苦労だ……なんだこれ、封筒か?」

ウォルトは机の間に挟まっていた封筒を引っ張り出した。厳重に封がされている。
中からは文字の刻まれた古い紙片が出てきた。

シュライ「随分かすれているが、古代文字か。高……専本……?」
イズミ「……計画、決戦……吸血鬼!?」

皆の視線が一斉にイズミに集まる。
イズミはこともなげに書類を指して言った。

イズミ「ああそうか、皆は読めんのか。随分形は違うが、東洋の文字に似ていたものでな。
しかし何故、東洋の書類がここに?」
シュライ「東洋の……。なるほど、そういうことか。イズミ、解読するのを手伝ってくれ」

『軍機密K特部隊計画要綱
 本土決戦用特殊部隊
 専ラ吸血鬼ヲ以テ編成サレル
 此ノ夜戦部隊を以テ敵上陸部隊
 高級司令部ノ覆滅ヲ期ス……』


シュライ「読み取れるのはここまでだな。文面からして、戦乱があった頃の連絡事項か」
メロ「戦乱で被害を受け、当時のまま捨てられた遺跡といったところでしょうか。
それであれば、技術が未発達な理由も納得いきます」
ウォルト「あ、それで違和感があると思ったんだ!東洋での技術を用いた基地なのか」


ところどころ崩れた通路を避け、冒険者たちはさらに奥へと踏み込んでいく。



キャリー「またわけのわからないものがごちゃごちゃと……。何に使うんだろう」
メロ「どうなんですか?」
ウォルト「俺に聞かれても古すぎてよくわからな……って、なんだこの鉄の塊」
イズミ「それを調べるのがお前の役目だろう。案外、古代の超兵器か何かかもしれない」

だから知らないっての、と文句を言いながらも近くに寄っていく。
見ながら、メロはある疑問を口にした。

メロ「何故、東洋の遺跡がここにあるのでしょう」
イズミ「過去の戦乱でここまで遠征してきたからではないのか?」
メロ「それほどの規模であれば、公に記録が残っていてもおかしくありません。
しかし、そのような記録は見た覚えがないのです」
シュライ「戦乱で全て焼け落ちたか、あるいは……」
ウォルト「その辺はリューンに帰ってから詳しく調べてみればいいんじゃないか?」

調査を終えたウォルトが仲間の元に戻りながら言う。

ウォルト「イズミの言うとおり古代の兵器みたいだな。外観の造りからして内部に入れるらしい。
動力源や操作盤は見当たらなかったから、おそらく中にあるんだろう」
シュライ「大掛かりな兵器を作れる技術力、東洋からの移民や戦乱の時期。
それに当時の地図と照らし合わせれば、ある程度情報を絞れるか」
キャリー「ただのゴブリン退治が、なんだかとんでもないものを見つけちゃったね」




メロ「あれは……家畜の残骸ですか。ひどく食い散らかしてくれたものです」
イズミ「村人たちが見たら泣くぞ」

妖魔が振り返り、赤い目をこちらへと向ける。
きぃきぃと金属をこするような、抗議めいた甲高い鳴き声が部屋に満ちた。
せっかくの食事を邪魔された怒りが、
集団の熱狂の中で増幅され明確な敵意へと変わり始める。
無数の敵意を向けられた冒険者たちは、手早く散開し戦闘態勢を取った。



メロ「最も大きいあれがリーダー格でしょう。取り逃がさないでください」
イズミ「任せておけ!我が剣の錆にしてくれる!」

魔剣を構えたイズミが真っ先に切り込み、

キャリー「あの様子だと、もうかなり魅入られてるんじゃないかな?」
ウォルト「大丈夫だ。あいつはあれが素だから」

そんな彼女を後方から支援する。
軽口を叩きながらもそれぞれの役割をこなしていく。
……勝負はすぐについた。

イズミ「ふん、他愛もない」
アッシュ「どうやらこいつらで全部のようだな」
イズミ「そのはずだが、妙だ。まだ剣の震えが収まらん」
シュライ「まだ生き残りがいるのかもしれない。油断するな」

魔剣を鞘に納めながら、言われなくとも、と返した。




ウォルト「ここだけ色が違うな。後から塗り直したみたいだ。この壁を壊せないか?」
イズミ「魔剣をそんな安っぽいことに……まあいい。下がっていろ」

イズミが壁を斬りつけると呆気ないほど簡単に壁土が崩れ、
塗りこめられていた扉があらわになった。
……扉に異常はないが、何か胸騒ぎを覚える。



ウォルト「よっぽど重要なものでもあるのかと思ったが、石の棺だけか」
イズミ「いや、中に東洋の遺物が入っているかもしれんぞ」
キャリー「え、まさか、開けるつもり?なんだか不気味だよ?」
イズミ「そんな顔をするな。それに、まだ剣の震えは続いている。
これが妖魔共をひきつける魔道具だとすれば、どのみち持ち帰って処分するしかあるまい」
メロ「それらしい理由を付けて、ただ中身を売り払いたいだけでは……」

メロが言い終わる前に蓋をのけ、中を覗き込む。
石棺の中には、見たこともない異風の装束をまとった死骸が収まっている。

イズミ「……なんだこれは。ただの干からびた死骸か」
アッシュ「余計な欲をかくからだ。いいから引き上げるぞ」
ウォルト「俺が言うのもおかしな話だが、あんな衣装は見たことないな。
古代人の服装って皆ああなのか?」
メロ「さあ、そこまでは。ほとんどは死骸ごと風化して、残っていませんので」

シュライ「(……何故、この遺跡だけは古代人の死骸が残っていたんだ?)」


「帝国は共同宣言を受諾しました。残念ですが我々の敗北です。
参謀本部から重要書類の廃棄のち、急ぎ部隊を解散せよとの命令が出ていますが」
「隊員を第一種軍装で待機させろ。夜を待って我々は近衛師団に合流する」
「中佐!それは明確な軍令違反です。反乱に投じるおつもりですか!」
「……戦いはまだこれからだ。幸福の欺瞞に応じない部隊は多い。
我々はあくまで聖戦を遂行するまでだ」
「聖断に背いてなお戦うとなれば、逆徒の誹りを免れません。
軍人は軍人らしく、命令に従うべきです。
それが出来ないというのなら……せめてお一人で」

ホルスターから小型拳銃が引き抜かれ、将校姿の男にゆっくりと銃口が向けられた。




冒険者たちはイーノック村へと帰還した。
心づくしのささやかなご馳走が振る舞われ、話を聞き伝えた村人たちが
冒険者たちの活躍を聞きのがすまいとつめかけた。

イズミ「しかし慌てず騒がずに、一直線に飛んできた矢をズバッ!一刀で薙ぎ払う!
……そこで私は奴に言ってやった。
ゴブリンにしては正確な狙撃だ、しかしそれゆえ予測しやすい……」

アッシュ「(毒矢って……。相当話を盛ってやがるな、あの調子乗り)」
キャリー「(まあまあ。イズミだって活躍したんだから。それに、村の人達も喜んでるよ)」

その晩は冒険者たちの手柄話を肴に、村の酒場は久方ぶりの活気に包まれて
いつまでも灯が消えることはなかったのだった。

明けて早朝に冒険者たちはイーノック村を発ち、
途中、依頼仲介の労を取った冒険者の宿への報告を済ませてリューンへ帰還した。

3へ続きます。
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