一次創作、時々版権ネタ。
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ツイッターゲーム「片道勇者オンライン」の自キャラRPをまとめました。
キャラ設定はこちら。
軽いですが一部グロ、死亡描写あり。
他のお子様が絡むシーンはカットしていますが、
流れの都合上載せざるを得なかったシーンも混じっています。
問題がありましたらすぐに取り下げますのでご連絡ください。
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軽いですが一部グロ、死亡描写あり。
他のお子様が絡むシーンはカットしていますが、
流れの都合上載せざるを得なかったシーンも混じっています。
問題がありましたらすぐに取り下げますのでご連絡ください。
(6/22 診断結果より)
「また狼ですか」
柱の影に隠れて様子を伺う。
あの男は放っておけば神の元に召されるだろう。彼にとってはそれが幸せだ、と思う。
同時に、彼に恩を売っておき徳を積むのも手だと心の声がする。
しばし考えを巡らせた後、助けに入るため杖を手にした。
(6/30 通常診断より)
「…ったく、癒し手が倒れるなんてみっともない。
僕も少しは癒しの理が使えたから良かったものの…。
それともなんですか、あのまま死ぬつもりでしたか」
目を覚ました癒し手に、アールデは容赦ない言葉を浴びせる。
その愛らしい両目に涙が溜まるのを見て、やっと口をつぐんだ。
(この程度で泣くなんて情けない!これだから子供っぽい人は嫌いです!)
叫びたいのをぐっと堪え、「死にたくないなら早く街に帰りなさい」と言うに留めた。
(7/1 通常診断より 当時のDK6)
やっとの事で鍵を開け、中身を取り出す。金銭はあるに越したことはない。
さて行こうと砦から外を覗き、気づいた。
闇がもう近くまで迫っている。
解錠に手間取ったためか、それとも無駄に人助けなどして時間を浪費したためか。
いずれにせよ急がねばならない。
(7/2 魔王襲撃イベントと通常の診断結果より)
強大な力を持つ魔王に、ただ一人勝負を挑んだ彼はまさしく勇者といえるだろう。
…彼が全裸でなければ。
(あれも斬新な自殺志願者なんでしょうか)
アールデは物陰に身を潜め、勝負の行方を(呆れながら)見守っていた。
彼が"救い"を求めているのであれば、邪魔するのは無粋だ。
それより近辺の住人に危機を知らせるべきだろう。魔王に挑むのは、それからでも構わない。
そう判断したアールデは、静かにその場を去った。
さて周囲に集落がないかと探すと、遠くに村が見えた。
闇からも魔王からもまだ距離はあるが、休息を兼ねて立ち寄るのも悪くないだろう。
(…ああ、全くついてないですね)
アールデは心の中で舌打ちした。
辿り着いたのは人間の里だった。耳長の自分は完全に部外者だ。
もとより人間には良い思い出がない。自分を騙し、仲間を弄んだのも人間だった。
人間全てが害悪とは思わないが、やはりいい気はしなかった。
(7/3 魔王襲撃イベントと通常の診断結果より)
先刻から降り出した雨は勢いを強め、アールデの身体にも大粒の雨が容赦なく叩きつける。
切り立った山脈でのこと、雨をしのげる場所もない。もとより身体の弱いアールデには堪えた。
なおも歩みを進めていると、前方に人が倒れているのが見えた。
辺りには焼け焦げた跡が広がっている。
騎士と思しきその人を助け起こすと、まだ温かい。
すぐに手当をすれば助かるかもしれないが、あいにくアールデにその術はない。
何より、神が"救おうとしている"命を無理に引き止めて何になる?
「大丈夫、あなたもじき神の御元へ逝けるでしょう。何も恐れることはありません」
名も知らぬ彼の安息を願い、祈りの言葉を捧げる。
いつしか騎士の身体は冷たくなり、それを支えるアールデもまた雨に濡れて冷え切っていた。
(このままこうしていれば、僕も彼と共に逝けるでしょうか)
そんな、心の内から聞こえる声に従いそうになる。
(7/4 診断結果より。一部カット済み)
(やはりこの地にも、神に呼ばれた人間はいるのですね)
行商人の安息を祈り、アールデは上着をきつく巻き直す。
より危険で、未知の領域が広い北の大陸。
果たして自分が求める真理は、ここにあるのだろうか。
自分の問いかけに答えてくれる人はいるのだろうか。
これまで出会った人々。彼らは危機に瀕してなお生き延びようとしていた。
別に、自ら"救い"を遠ざける愚かしい信念を咎めるつもりはない。
自分が問いたいのはただ1つ。
「…神よ、何故生きたがる者のみを呼び寄せるのです」
(7/6 1日早い七夕ネタ。よその子ネタを含みます)
歩みを進めるうち、奇妙な集団と出会った。
皆風変わりな格好をしており、手に細長く切った紙を持っている。
聞けば異世界からの旅人で、故郷に伝わるまじないの準備をしているらしい。
紙に願いを書き、特別な木に吊り下げると星が願いを叶えてくれるそうだ。
彼らに勧められるまま、僕も紙を手に取った。
こんなもので願いが叶うのだろうか。
異世界の理に疑問を持ちつつ、ふと以前会った戦士を思い出した。
そういえば彼も雰囲気こそ違うが奇妙な装いをしていた。
もしかしたら彼もまた異なる世界から来たのかもしれない。
彼らのことを思ううちに、自ずとペンが動いた。
『これまでに出会った生きたがり達に、未来をください』
…我ながら馬鹿げている。
神の意思に背くような願いを書くことは気がひけるが、もとより異世界の理に則ったものだ。
僕の願いがこの世の理から逸脱していても構わないだろう。
星々が願いを叶えるのは明日らしい。間に合ってくれればいいが。
空を覆い尽くさんとする闇を見つめながら、明日の天気を案じた。
(7/9 超巨大遺跡突入前)
超巨大遺跡の報らせを受け、アールデは歓喜に震えるのを感じた。
誰も知らない遺跡、帰った者は一人もいない危険地帯。
まさしく自分の追い求めていたものだ。
その最奥には甘美な救済が、世界の真理が眠っているかもしれない。
(人は何故死を恐れるのか、何故生に執着する者ほど早く命を落とすのか…、
その答えも得られるでしょうか)
アールデは入念に準備をすませると、期待を胸に迷宮へと向かった。
(7/15 診断結果より 死亡イベント、一部カット済み)
(死は平等に訪れる、とは言いましたが。こうも早く僕の番が来るとは)
冷たい石の壁を背に感じながら、アールデは必死に考えを巡らせる。
目の前には宝箱の番人が迫る。
先ほどの壊れたゴーレムから判断して、
この先には重要なものがあるのだろうと推察したのが間違いだった。
かろうじて宝箱は回収したが、度重なる戦闘によって消耗した体では太刀打ちできず。
腕と片足を砕かれ、もはや抗うことも逃げることもできない。
四肢の焼け付くような痛みに阻まれ、まともな思考ができない。
しかし怯えずとも、苦痛はすぐに感じなくなるはずだ。
全てから解放され、永遠の安息を得る。これこそが死の救済なのだろう。
そう理解した瞬間、冷静な思考とは裏腹に抑えられない感情が噴き出す。
(何も感じなくなるのは嫌だ。思考を止めてしまえばただのモノと変わらない。
物言わぬ死体に成り果てるのは怖い)
……ああ、本心に嘘はつけない。まだ生きたい。死にたくない。
真っ直ぐに、ゴーレムの巨大な拳が振り降ろされた。
(7/16 転生イベント)
風が頬を撫でる感触に、ゆっくりと意識を浮上させる。
ここはどこだろうか。目を閉じたまま思案する。
確か自分は迷宮で襲われ、死んだはずだ。愚かにも死にたくないと嘆きながら。
(…いや、それは"夢"の話)
目を開けて身を起こす。
雲一つない青空と、穏やかな草原。
遠くに見える闇さえ除けば、平和な大陸の風景が広がっている。
風に、暗い桃色の髪がふわりとなびく。
「行きましょう。今度は、同じ過ちを犯さぬように」
(7/16 通常診断より)
「転生…ですか」
俄かには信じ難い話だが、目の前の少年はかつての友人に良く似ている。
その昔、異教徒に嵌められて見殺しにしてしまった仲間の。
そう告げると、少年はへらりと笑って
「そうそう、覚えててくれて嬉しいよ。いやお前の言う通り、死ぬのも悪くないな」と答えた。
そう、死とは全ての者に等しく訪れる安息の時。何も恐れることはないはずだ。
あの時目の前で散っていった友人は、そして一度は死んだ僕自身も、
ただ弱気になっていただけに過ぎない。
「それに、あの怖くて怖くてどうにかなりそうな苦痛もまた体験してみたいしな」
「…はい!?」
「え、あの、待ってください。あなたそんな性格してましたっけ?」
「それが一度死んで価値観が変わったっていうか、何かに目覚めたっていうか?」
我が耳を疑うとはこの事か。
限界を超えた苦痛の素晴らしさを嬉々として語る友人に、
死とは人を狂わせるのかもしれないと思った。
(7/17 魔王襲撃イベントより オプション使用)
火炎がアールデの頭を掠め、髪の焦げる匂いがした。
木の陰から様子を伺う友人に、大丈夫だと頷いてみせる。
相手は魔王、それも以前より禍々しさを増している。
誰の助けも借りず挑むのは無謀かもしれない。
魔王の手に再び炎が宿る。森ごと焼き尽くすつもりなのだろうか。
(理術はことわりを正しく操る頭と心があって力を発揮するもの。
理性を失った理術士などに負けるものですか)
魔王の手から炎が放たれると同時に、アールデの杖から火炎が迸る。
2つの炎が空中で激しくぶつかり合う。
正しき理力の在り方を見せてやろう、と杖を握る手に力が入る。
…気が付けば森のはずれで友人に介抱されていた。
聞けば魔王が逃げ去った直後に意識を失い倒れたらしい。
余程気を張っていたのだろうと友人が笑う。
引き分けるような形になったのは悔しいが、それでも退けたのだから負けではあるまい。
「それに、まだ生きてますから。それで十分です」
そう言うと、友人は驚いた顔をして
「お前がそんなこと言うなんてな。死に損なったと残念がるもんだと思ってたよ」
「ええ、自分でも妙な感じですが、生き延びたのが嬉しいんです。
決して死を拒むわけではありませんが」
考えうるに、死による救済を尊く思うと同時に
生きて学び続けることもまた素晴らしく思うのだろう。
どちらを選ぶかは、その人の信念によるものだ。
…少なくとも、目的を持って死に抗う者達を愚かだと嘲笑うのはもう止めよう。
友の手を取って立ち上がる。この世の真理を見届け、ついでに魔王と決着をつけるために。
(7/19 魔王襲撃イベントより)
彼らの幸運は見知らぬ勇者候補の助けによって窮地を脱したことにあり、彼らの不運は…
「うおぉお化け!?」
「落ち着きなさい、ただの亡霊です。
おそらく害意はないか、いや悪霊で僕達を利用する気かもしれませんが」
…その助太刀が彼らの理解を超えた存在であることだった。
「…それで何が目的ですか。死してなおこの世界に留まっている以上、未練があるのでしょう」
アールデが問いかけると、霊魂は彼らの背後を指差した。つい先ほど魔王から逃げてきた方向だ。
「ん、魔王にやられたのか?」
「アレに負けたのが心残りなんですか」
2人が問うと霊魂が頷く。アールデは深くため息をついた。
死に急ぐ生きたがりの多いことと、そして自分のあまりにも馬鹿らしい思いつきに呆れて。
「はぁ…、わかりましたよ。魔王は僕達が何とかします。
仇を取るとまではいかなくとも、一矢報いるぐらいなら出来るでしょう」
「絶対とは言えませんが、力は尽くします。だから安心して、もう休みなさい」
そう言うと霊魂はしばしアールデの顔を見つめていたが、深く頭を下げそのまま消えていった。
余計な厄介ごとを背負いこんでしまったが、やむを得ないだろう。
これも死者をあるべき場所へ送るためだ。
「…お前さぁ、そんなにお人好しだっけ?」
「自分でも馬鹿だと思ってます。けど、どうしても放っておけないんですよ。
僕よりもっと馬鹿な生きたがりを、ね」
(7/20 よその子への支援に繋ぐためのRP。一部カット済み)
「おかしいな、確かに迷宮の奥を目指してたはずなのに。この辺はもう地上か?」
「ひ…人の話、聞いてました?迷宮に行っては駄目だと、言ったでしょう」
首をかしげる友人に追いつき、肩で息をしながら答える。
剣士を看取り戻ってきてみれば、今度は友人が迷宮へと入っていく。
その時の衝撃は一言では言い表せない。
よほどひどい顔をしていたのか、友人もさすがに驚いたようで
「おい大丈夫か?悪かったよ、置いてったりして」
「そういう問題じゃ…いえ、理由を説明しなかった僕にも責任はありますが」
アールデは一呼吸おいて、最初から話しだした。
初めて迷宮に潜った時のこと。知り合いの亡骸を見てしまったこと。
そして、自分もまた同じ末路を辿ったこと。
…そして今さっき、また別の知り合いを看取ってきたこと。
立て続けに友人を失うのも、自身が彼らと同じ場所に送られるのも、もう御免だ。
「お前も変わったよな。昔は人が死ぬたびに喜んでたのに」
「変わりますよ。まだ生きたいと足掻く人達をたくさん見てきましたから」
そんな会話を交わしながら、再び歩き始める。
自分のせいで余計な時間をとってしまったが、
今はここが大陸のどのあたりか確かめないといけない。
(7/26 診断結果より ※死亡イベント)
旅の疲れが出てきたのか。火山を歩く途中、うかつにも大グモに近寄りすぎてしまった。
粘性の糸が足を捉え、思うように動けない。
(ああもう、ルフトはどこまで偵察に行ってるんですか!)
飛んでくる糸をフォースではじき返しながら、別行動中の友人を思う。
ただの大グモなら大した相手ではない。友人が戻ってくればすぐに反撃に出られるだろう。
しかし自由に動けない今は防戦一方であり、
クモの吐き出す糸も徐々に捌ききれなくなっていく。
追い詰められていくアールデの脳裏に、例の人面クモがよぎる。
…まさか、彼も捕まったのでは。
アールデの動きが止まった瞬間を逃さず、ここぞとばかり大グモが糸を吐きかける。
たちまち自由を奪われてしまった。
糸を断ち切らんともがくアールデに容赦なく巨体が迫り、白い首筋に牙を突き立てる。
途端に、全身に鋭い痛みが走る。思わず呻き声が漏れる。
手足に力が入らず、膝をつく。息が出来ない。毒グモか、と気付いた時には既に遅く。
うずくまるアールデに大グモがのしかかり、繭を作り始める。…が、程なくして動きを止めた。
獲物が全く動かない。鼓動が止んでしまった。
元々弱っていた上に小さすぎて、クモの麻痺毒に耐えられなかったらしい。
こうなれば同胞に変えることは出来ないし、餌としても使えない。
大グモは半端に作った繭を残し、興味を無くしたように去っていった。
(7/27 転生イベント)
ここはどこだろう。何も見えない。どこか遠くで足音が通り過ぎる。
自分は大グモに襲われて、おそらく捕まったのだろう。
このまま侵食されて、クモに成り果てるのだろうか。
化け物になってまで生き延びたくはない…。
暗い考えが渦を巻き、飲み込まれそうになる。
「…おいアールデ!起きろって!」
その声ではっと目が覚めた。
自分は路地裏で膝を抱えて小さくなっていた。
目の前に友人の顔があり、その向こうには道を行きかう人々。
それに気づくと同時に、賑やかな声が耳に飛び込んでくる。
ここはどこかの街らしい、とようやく理解した。
「…あれ、生きてる?」
「どこ行ってたんだよー、探したんだぞ?」
「い、行ってたといいますか…。あなたこそ何をしてたんですか」
こちらの問いかけはお構いなしに、彼はさっさと歩きだしてしまう。
未だ現状が飲み込めないが、置いていかれないよう慌てて追いかけた。
(7/29 診断結果より。前日に女王グモ戦を挟んでいます)
女王グモを討伐した旨を伝えるべく、アールデ達は一度街に戻ってきた。
これでしばらくはこの辺りも安泰だろう、そう思ったのもつかの間。
「…な、なんで、僕達が追われなきゃ、いけないんですか…!」
アールデは物陰に隠れるようにしゃがみ込み、荒い息の下から言葉を絞り出す。
街の女性から熱烈な求愛を受け、やっとの事で逃げ切ったところだった。
「お疲れさん。お前って意外と有名なんだな」
「他人事、だと思って…!」
涼しい顔のルフト…真っ先に逃げた薄情な友人に文句の一つも言いたいが、
上手く言葉が出てこない。
彼はアールデの抗議にも動じず、
「なんたって危機に瀕した人がいれば助けに入り、超巨大迷宮にも臆せず立ち向かい、
おまけに女王グモも討伐して…。体力がないのが玉に瑕だが、そりゃ人気にもなるよな」
…人助けは神の御許へ行くためのついでに過ぎず、迷宮では容易く殺された。
クモ討伐も自分1人の功績ではない。
彼の台詞を心の中で訂正していたが、次の言葉だけは聞き逃せなかった。
「闇を統べる竜に打ち勝つことも、あなたならできるだろうって言われてたしな。
すごい持ち上げようだ」
「…待ってください、あの人、そんなこと言ってました?だいたい、竜ってなんですか」
「さあ、そのあたりで逃げてきたから詳しくは…悪かったよ、謝るからそんな顔するなって」
乱れた息を整え、アールデは立ち上がりながら考えた。
闇を統べる竜。どう考えても女王グモより厄介な相手だろう。
できることなら関わり合いになりたくない。
(僕はただ、闇に飲まれて全てがなくなる前にこの世の真理を見届けたい。それだけだ。
別に闇に対して深い因縁があるわけじゃない。…関係ない、はずだったのに)
「…とりあえず、手分けして調べてみましょう。竜がいったい何なのか。
竜に挑むか否かは、それから考えればいい」
(7/30 最終決戦イベントより)
「この辺りは街も集落もないな。ここなら大丈夫じゃないか?」
ひょい、とルフトが木から飛び降りて言った。
日は高くもう真上に近い。街を出たのが夜明け前だったから、随分と経ったことになる。
アールデは女神より託された神器を取り出して呟いた。
「本当にこれを使えば全て解決するんでしょうか」
「それは女神を信じるしかないだろ。
お前ならそれを扱うことが出来るとか、世界を救えるとか言ってくれたんだし」
「別に、世界をどうこうしたいわけではありませんが…」
とやかく言っても仕方ない。迫りくる闇に向き合い、神器を振るった。
すると空気が震え、黒い霧が大きく動き始める。
やがて霧は次第に薄くなっていき、その奥に潜んでいた者の姿が露わになる。
黒々とした鱗に覆われた巨体、これが噂に聞く竜なのだろう。
…敵討ち、という言葉は嫌いだった。
当人に頼まれたならまだしも、死者の恨みを晴らすなど無駄なことだと思っていたから。
しかし、今は思いたい。彼らは、世界を蝕む闇が消えることを願っていると。
(7/30 エンディング よその子ネタを含みます)
黒龍が去り、闇が晴れた後。アールデは今なお、竜がいた場所を見つめていた。
(…あの時、確かに彼は共に戦ってくれた)
風変わりな装いをした隻腕の剣士。見間違うはずがない。
呼びかけても応えてはくれず、激しい剣戟の中で見失ってしまったが。
例の狩人も、何故半獣の姿に戻っていたのか聞きそびれてしまったが。
しかし、 彼女が生きていたという事が分かっただけ良かった。
(これじゃあ、敵討ちの意味がないですね。
馬鹿みたいに格好つけたりして、何のために命を張ったんだか。
…でもたまには、馬鹿になるのも悪くない)
「…覚えてます?昔のこと。まだ、邪教徒の元に身を置いていた頃のこと」
日暮れに2人きり、街に続く道の上。アールデは半歩先を行くルフトに問いかけた。
「あの時は、より多くの人々を神の御許に送ることが、その人の為になると思っていました。
…ただ、この旅を通じて気づいたんです」
「力の限り日々を生き抜いていた人々とって、僕は理不尽に未来を奪う魔物でしかなかったと。
そういう意味では僕もあの闇も同じ、」
「それは違う」
ルフトはいつになく強い口調で遮った。
「確かに、お前も俺も多くの命を奪ってきた。けど、その分だけ別の命を救ってきた。
つまり、その、上手く言えないけどさ。
命の重さは天秤にはかけられないにしても、ただ奪うだけの闇とは違うんじゃないか?」
アールデは驚いたように友人の顔を見た。ルフトは続けて
「むしろお前と一緒にいただけで自分では何もしてない、俺こそ闇と同じかもな」
と苦笑した。
やがて、行く手に三叉路が見えてくる。2人は道標の前で立ち止まった。
「んで、これからどうするんだ?世界の真理を求める旅っていうのを続けるのか」
「当然そのつもりですが、その前に一度故郷に帰ろうと思います。
やはり、過去の行いにきちんと向き合わないと先へは進めません」
「そっか。じゃあ俺も何かしらの形で罪滅ぼしでもしようかな。
お前ほど強くもないし賢くもないけどさ、俺に出来ることを探してみるよ」
アールデは黙って頷いた。
2人の旅はひとまず終わりを告げ、ここから先は別々の道を歩むことになる。
「では、また。生きていればまた会うこともあるでしょう」
「きっと会えるさ。もちろん、あの人達にもな」
「さあ、それまで彼らが生きているかどうか。まあ、死んでも探しに行きますよ」
…そう遠くない未来、全く違う世界で彼らが再会するのは、また別の話。
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