一次創作、時々版権ネタ。
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推奨レベル3~5
- 不死者は戦争の夢を見るか -
(貼り紙より抜粋)
ネタバレ、スクショ多数につきご注意ください。
- 不死者は戦争の夢を見るか -
(貼り紙より抜粋)
ネタバレ、スクショ多数につきご注意ください。
「沖縄が米軍の手に落ちました。都市部は連日の空襲です」
「守備隊は全滅か、いよいよだな。上陸部隊が本土に押し寄せるのも時間の問題だ」
「部隊設営の進捗状況はどうだ。計画通り進んでいるか」
「不調です。各師団に候補生を出すよう通達は出ているのですが……」
「どこも優秀な兵をわけのわからん新設部隊に送るわけもないか。
やむを得ん。予備学生を回してもらえ。
特攻要因は兵器の方が足りない状況だ、人数に余裕があるだろう」
「学生ですか……」
「厄介払いで質の悪い兵を送り付けられるよりはまだ役に立つ」
「戦況は日を追うごとに悪化の一途……。もはや手段を選んでいる猶予すらない。
かつての盟邦も今はなく、帝国は世界中を敵に回して焼き尽くされる運命にある……」
交易都市リューンにほどちかく、控えめにそびえるアルバ山地の峰々……
その麓にある小さな地方都市の雑踏の最中に、冒険者たちの姿はあった。
ウォルト「でもリューンに比べたら全然だぜ。なんでこんな田舎街に足を伸ばす必要があるんだ?」
メロ「北東地方の情報はリューンに届く前に必ずここを経由しますから。
なかなか馬鹿にできません」
イズミ「一部とはいえ最新情報が集う街だ。同業の者たちを出し抜くにはちょうどいいだろう」
アッシュ「さも自分が提案したような顔しやがって。全部シュライに聞いたんだろ」
イズミ「ふん、仲間たちの知識をうまく生かすのもリーダーたる者の役目だ」
一行は冒険者の宿へと向かう。
店内はがらんとしていて、声をかけると店員らしい女性が面倒くさそうに出てきた。
店員「あんた達は冒険者ね。でもご生憎様、マスターは出かけてるわ。
私が紹介していい依頼は……ほら、これよ」
イズミ「おつかい、ゴブリン退治……こっちはドブさらいか」
キャリー「わざわざ余所に来てまでするような依頼じゃないね」
店員「そりゃあパッとしない街だけどさ。割と有名な名物料理だってあるし、
この時期は刀剣市も開いているわ」
イズミ「刀剣市か……」
宿を後にしたイズミは、街の出口とは逆の方へと歩き出す。
イズミ「ここまで来て収穫もなく帰るわけにもいくまい。
もののついでに、刀剣市とやらを見に行くぞ」
アッシュ「んなこと言って、自分が興味あるだけだろうが」
ウォルト「え、でも面白そうだぞ?俺もイズミに付いて行く」
メロ「……マスター、いかがいたしましょう」
シュライは黙って肩をすくめた。
リーダーが一度言い出したら聞かないことは、これまでの経験からよく知っている。
かくして一行は刀剣市が催されている広場へと向かった。
シュライ「これはちょっとした壮観だな」
ウォルト「なあイズミ、くれぐれも無駄遣いするなよ」
イズミ「考えなしに散財するほど馬鹿ではないわ!それにこのあたりの品は華美で使いづらいか、
さもなくば……これらのような使い物にならぬ骨董品ばかりだ」
言いながら、ちょうど通りがかった露店を指差した。
その露店にはどこの倉庫から持ち出してきたのか、
埃の積もったロングソードや錆びたメイスなどが無造作に並べられている。
イズミ「当然だ。暖炉の上に100年は飾ってあったような品々ばかりではないか」
キャリー「ちょっと、いくらなんでも失礼だよ!」
店主「いや、実際ガラクタだから仕方ねぇ。
そう言うあんたは冒険者かね。腰のものを拝見」
言いながら露店の親父はイズミの刀を手に取った。
店主「こりゃひどい。うちのと大して変わらん」
イズミ「なんだと?」
店主「冗談だ。よく使い込まれた良い剣だな。手入れもいい」
キャリー「もう、イズミが最初に失礼なこと言うからだよ」
イズミ「あれは事実を述べたまで……まあいい。
私が故郷にいた時から共にしてきた刀だ。ここいらの剣とは違う」
そう言って店主が取り出した剣は、一見何の変哲もない代物に見えた。
イズミは試しに手に取って鞘を抜き、思わず目を見張った。
イズミ「(不思議な刃だ。見つめているとまるで吸い込まれそうになる。
私の刀と同等、いやそれよりも優れた業物かもしれん)」
店主「そいつは俺のとっておきの一振り、その名も『妖魔斬り』だ。
どういうわけだか知らんが、人に仇なす妖魔に限って切れ味が段違いでな。
かすっただけでも肉を割き骨を断つ。切ったはったの冒険者家業にはもってこいじゃないかね」
イズミ「売ってくれる気か?しかしそんな大金は……」
店主「いいや、こいつは譲ってやる。あんたにな。その方が剣にも甲斐があるだろうよ」
イズミは呆気にとられながらも魔剣を受け取り、露店を後にした。
シュライ「これはまた、すごいものをもらったな」
アッシュ「一生分の運を使い果たしたんじゃねえのか?」
イズミ「妖魔斬り……そういえば、ゴブリン退治の依頼があったな。
あれで切れ味を試すとしよう」
シュライ「(このペースだと一週間後には剣に支配されるな)」
イズミ「聞こえておるぞ!全く、笑えない冗談を」
キャリー「本当に大丈夫なの?」
アッシュ「心配すんな。こっちに刃向ってきやがったら殴り倒して止めてやる」
シュライ「四肢は砕くなよ。死体としての利用価値が半減する」
メロ「マスター、それにアッシュも。あまり物騒なことを言うのはおやめください」
キャリー「ま、魔剣に魅入られたら殺すしかないの?」
ウォルト「イズミ、それ今すぐ返してこい!手遅れになる前に!」
メロ「……こちらの世間知らず達が信じてしまいますので」
一行は宿に戻って依頼を受け、
最低限の準備を済ませるとゴブリンの跋扈する村へと向かったのだった。
さして険しいともいえぬアルバ山脈に連なる丘陵の間を縫うようにして、一路西へ。
たどたどしく書かれた文面からは、それ以上の情報を読み取ることはできなかった。
……太陽が高く昇るころ、一行はイーノック村へ到着した。
わずかな家屋とちっぽけな畑を杉の植林が囲み、
山から吹き下ろす風に辛うじて耐えているという趣だ。
一見して、報酬上乗せできるような余裕があるようには感じられない。
冒険者たちは一番マシに見える家を訪ね、
村で最年長の老人に依頼内容の詳細な説明を求めた。
老人は求めに応じ、何度かつっかえながらも村の置かれた状況を丁寧に語った。
シュライ「……要するに、二つ山の向こうからやってくる妖魔に家畜を荒らされている。
被害は牛三頭に雌鶏十数匹のみ。人的被害はない」
メロ「しかしながら、このように小さな村では甚大な損害です。
家畜という働き手がいなければ畑も耕せず、冬を越せないかもしれない」
ウォルト「こっちの……田舎の村ってのは大変だな。
どうする、イズミ?大した報酬は得られそうにないぞ」
イズミ「構わん、引き受けよう。元より稼ぐためにここへ来たのではない」
アッシュ「(なにせ本当の目的は魔剣の試し斬りだからな)」
辺りには畑を耕す農民や家の手伝いをする子供の姿も見える。
冒険者たちは村を抜け、ゴブリンの巣食う山へと入った。
シュライ「それにしても、この山からゴブリンの巣を探すのか」
キャリー「日のあるうちに手がかりを探さないと、今日一日を無駄にするかも……」
イズミ「……いや、どうやら近いようだ」
仲間を手で制し、腰に穿いた魔剣に目線をやる。
妖魔の気配を察したかのように、それと気づかぬほど小さく刀身が震えを発しているという。
ウォルト「本当か?俺でも全く奴らの痕跡が見つけられないのに。すごいな、その剣」
アッシュ「持ち主よりすごいんじゃねえの?」
イズミ「言ってろ。今に目にもの見せてやる」
軽口を叩きつつ冒険者たちは警戒態勢をとって慎重に進んだ。
ウォルト「この岩の裂け目、空気の流れがある。奥は……相当広いな」
アッシュ「ゴブリンの巣か?」
ウォルト「かもしれない。体を横にすれば何とか通れそうだが……相当きついぞ、これ」
それでも裂け目を通り抜けた一行の前に、洞窟と一匹のゴブリンが現れた。
いち早くイズミが魔剣を抜き、背を割られたゴブリンは土を噛んで突っ伏した。
イズミ「ふむ、なかなかの切れ味だ。この調子ならばすぐに片が付くだろう」
アッシュ「調子に乗んなよ。そうやって油断してると碌なことが起きねえからな」
しかしアッシュの心配とは裏腹に、後から現れるゴブリンも順調に切り伏せていく。
最初は不自然だった剣の構え方も、何度か振るううちに様になってきたようだ。
イズミ「また裂け目か。しかし最初のものよりはずっと広いな。十分に通れるだろう」
ウォルト「(……あれ、ここだけ材質が違う?……なんで、これがここに……)」
イズミ「おいウォルト!早く来い!」
ウォルト「……あ、ああ!今行く!」
裂け目を抜けると、入口とは違った雰囲気の空間に出た。
ほとんど朽ちかけているが、明らかに人の手が入った形跡がある。
真正面のドアを開けると、かつては誰かが手入れしていたであろう部屋があった。
壁際には背丈ほどの棚が並んでいて、用途不明の品々が埃をかぶっている。
辺りを見回していたイズミが衣装箱を見つけ、皆を傍に呼び寄せた。
イズミ「中身は……役に立ちそうなものは入ってないな」
キャリー「見たことないものばっかりだね。もしかしたら、古代文明の遺跡か何かかな?」
メロ「少し違うような気もしますが……、貴方はどう思います?」
話を振られたウォルトはしばらく考えた後、衣装箱から拾い上げた銃を見せながら言った。
ウォルト「何かしらの遺跡という可能性は高いと思う。
……だが、古代の技術にしては古すぎる。
この銃にしたって、作りは特殊だが現代の技術でも再現できそうだ」
アッシュ「そりゃあ古代の遺跡なんだから、古いのは当たり前じゃねえか?」
シュライ「……晩期の遺跡ではないと?」
イズミ「どういうことだ?」
メロ「つまり古代文明が最も発展していた時期のものではなく、
まだ技術が未発達だった頃のものということですか」
ウォルト「そうそれ!今まで見てきた遺跡よりも、ずっと未熟なんだ!」
我が意を得たりと大きく頷いた後、顔を曇らせた。
ウォルト「……しかしここまで古いと、俺でもよく分からないな」
イズミ「肝心な時に役に立たんな。しかし、古代の遺物であることは確かなんだな?」
ウォルト「そう考えていいと思う。
まだ少し引っかかるところはあるんだが、ゴブリンを探しながら詳しく調べてみるよ」
2に続きます。
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