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一次創作、時々版権ネタ。
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ツイッターゲーム「黄昏町の怪物」の自キャラRPをまとめました。
キャラ設定はこちら

軽いですが一部グロ、死亡描写あり。随時更新予定。
酷いグロはカットしているので一部のRPがぶつ切れになってます。

10/4更新。


7/15~7/31 8/1~8/14 8/15~8/31 9/1~9/14 9/15~9/30 10/1~

(7/16 診断結果より)
「殺されたら強くなるって聞いたけど、俺まだ何ともないんだよな。
まあ、腕がごつくなってこれが付けられなくなっても困るけど」
そう語りながらナナイチは袖を捲り、腕輪を見せた。
「普通の腕輪なんだけど、裏に文字が彫られてて…ほら」
手首を逸らし、内側を指差す。

よく見れば英語と数字の羅列が彫られている。
ナナイチは腕輪の縁をなぞりながら
「ここ。たそがれ、の、ななみいちや、って読めない?
…無理がある?まあ、俺はそう読んでる」
そう言って袖を戻し、左手を振る。
「それで、ここに来たら何か思い出すんじゃないかと思って」


(7/19 ハンドアウトと過去回想)
夢を見た。夢の中で俺は、前を行く誰かを追いかけていた。
走っても走っても追いつかず、次第に不安と焦りが大きくなっていく。
『…あれは誰だろう』
『何故追いかけてるんだろう』
『分からない。でも、行かないといけない…』

…風の音がして、ふと現実に引き戻される。
いつの間にか、アスファルトで舗装された道の上に立っていた。
足元には意味をなさないバラバラの文字。まるで夢の一部のようだ、と思った。


(7/21 診断結果より※死亡イベント)
丈夫そうな枝に縄を括り付け、余った先を住人に渡す。
「念のためにこれで俺の手首を縛ってくれない?
あと、踏台になりそうな椅子も貸してほしい」
殺される者と殺す者が協力する奇妙な光景を、疑問に思う者はいなかった。
準備が整うとナナイチはひとつ深呼吸して、踏台を蹴った。


(7/22 診断結果より)
塀の向こうが見えないかと数度ジャンプして、妙に体が軽いことに気づいた。
よく見れば、昨日までは無かったはずの半透明の羽が生えている。
「なんで羽?…それよりこれ、飛び越せないかな」
ダメ元で試してみるかと数歩下がり、助走をつけて勢い良く飛び上がった。

塀の縁に爪をひっかけ、両腕でしがみつく。
すかさず壁を蹴って半身を乗り上げ、何とか塀の向こうへと転げ落ちた。
「いたた…けど、上手くいった…あ」
体を起こし、手を見て固まった。爪があちこち欠け、根元から折れているものまである。
「どうしよう、これ。…まあ、いいか」


(7/23 昨日の続き+診断結果より※微グロ)
来た時と同じように塀を乗り越え、今一度爪を見る。
度重なる酷使のためか、ほとんどが根元から折れてしまっていた。
「まあ、いいか。次行こう」
…あてもなく歩いていると、不意に足首を掴まれた。見たことのある腕だ。
切り落とそうとして、爪が使いものにならないことを思い出す。

…それからしばらくして。
側溝には食い千切られた手首と、うずくまってえずくナナイチの姿があった。
「うえええ、気持ち悪い…もう絶対やらない…」
異形の腕に牙を突き立てた時の感触が、臭いが頭から離れない。
この道は出来る限り通らないようにしよう、と心に決めた。


(7/24診断結果より)
ナナイチは長い間川底を見つめていたが、やがて諦めたように座り込んだ。
(あれがあれば、昔のことを思い出せるかもしれないのに)
根拠はないが、そんな予感がした。自分が何者なのかを知る手がかり。
それがあれば、まだ人間でいられると。

…怪物のような見た目でありながら、人間でありたいと思うのか。
そう思うと何だかおかしくて、笑いがこぼれる。
(まあ、別にいいけど。
見た目がどうなっても、頭で考えて行動してるうちはまだ人間やめてない…ってことで)
軽く頭を振って立ち上がる。今日の寝床を探さなければ。


(7/25 診断結果より※死亡イベント)
道の向こうから、スピードを上げて車が走ってくる。
道の端に寄ってやり過ごそうとしたが、住宅街を走る狭い道にそんな幅はない。
振り返れば車は目前に迫っていた。
(うわ、事故だ。これ普通に事故だ)
スローモーションになる視界の中、そんな考えが頭に浮かんだ。


(7/26 ハンドアウトと過去回想)
夢を見た。夢の中で、狭いアパートの一室に立ちつくしていた。
机の上には2人分のカップ、しかし周りには誰もいない。
他の部屋もひとつひとつ覗いていくが、どの部屋もがらんとしていて人の気配はない。
(…部屋の住人はどこに行ったんだろう?)
不意に肩を叩かれ、振り返ると…

…そこで目が覚めた。
独特な薬の匂いが鼻につく。どうやらベッドに寝かされているようだ。
「これで縛られてなければ、事故で入院した普通の患者なんだけど。
…いや、死んだんだっけ」
今度は何が変わったか確かめようにも、首しか動かせない。
しかし見たところ変化はなさそうだ。


(7/28 診断結果より※死亡イベント)
黄昏色の空を背に、少女が力無く笑う。
諦めたような表情が気になって一歩踏み出し、その子と目があった。
…違う、人間じゃない。
目がそらせない。まるで金縛りにあったように動けない。
動揺する俺の前に、その子が近づいてくる。またやってしまったと自分の判断を悔やんだ。

「恨んではないよ。それがこの町だから」
自然とそんな言葉が出てきた。自分を殺す異形を、何故気にかける必要があるのかと思う。
少女の手が首に伸びる。
(首を絞められるの、死ぬほど苦しいから嫌いなんだけど)
手に力が込められるのを感じながら、早く終われと心の中で念じた。


(7/29 ハンドアウトより)
目が覚めると、見覚えのある白い天井が視界に飛び込んできた。
相変わらず手足は縛られていて動けない。
(前に来た時は、死んでやり直したから…。うん、殺されるのを待とう)
考えてみればおかしな話だ。
今の自分は死ぬことも、異形が増えていくことも当たり前に受け入れている。

死ぬのが怖いと、異形になりたくないと必死になって足掻く方がよっぽど人間らしい。
俺はいつの間に狂ってしまったんだろう。自嘲的な笑みがこぼれる。
…どれぐらい経っただろうか。誰かの足音がして、視線をそちらに向ける。
巨大な怪物が枕元に立っており、自分を見下ろしていた。


(7/31 ハンドアウトと過去回想)
夢を見た。俺は子供になって、誰かに背負われていた。背中から伝わる体温が心地いい。
「お前も…しっかりしないと… …出て行くんだから…」
彼が何か言っている。そうだ、彼はもうすぐ行ってしまう。
いつまでも彼に甘えてはいられない。…でも今はまだ、このままでいたい。

次に目が覚めると、暗闇の中で光る目がこちらを見ていた。
…いや、これはただの鏡だ。
自分の姿が透けていたために、はっきりと顔が見えなかったらしい。
外に出てから改めて体を見ると、昨日まではなかったはずの獣足が生えている。
もはやどう見ても人間ではない。

「強いて言うなら、羽の生えた化け猫かな。…猫に失礼か」
次はどんな姿になるんだろう、と思いながら歩き出す。


(8/2 ハンドアウト診断結果と過去設定)
夢を見た。霧がかった橋の上に、誰かが立っている。
その顔が見えた瞬間、思わず駆け出していた。
「待ってくれ!俺も一緒に行く!」
彼は困ったように笑って、早くおいでと言わんばかりに手招きした。
つられて俺も笑顔になる。伸ばした指先が彼に触れる…

そこで目が覚めた。知らないうちにベンチで眠っていたらしい。
…去っていく猫を見送って、ふと先程の夢を思い出す。
幾度となく夢に出てきたあの人を、俺は知っている。
もし会えたら、自分のことも思い出せるかもしれない。
「…会いたいな」
探しに行こう。この町を出て。

ベンチから立ち上がり、歩き出したが足がふらつく。
「やばい、お腹がすいて気持ち悪い…。何か食べ物もらえるところ、あったかな」
辺りを見回すと、怯える住人と目があった。
無理もない、こんな異形に会えば自分でも怖い。
(…この際、あれでもいいか)
心の囁きが聞こえた。


(8月3日 診断結果より)
鳥居の外には、これまでとは違う景色が広がっている。
「もしかして、ここから外に出れ…っ!…痛い」
勢いよく額を打ち付け、呻き声を上げる。手で触れてみると、見えない壁があるようだ。
異形を閉じ込める結界だろうか、と額を押さえながら考える。

人間になるか、力尽くで無理やり壁を破るか。どうにかしてここを越えないと帰れない。
辺りを見渡すが、ここが町のどの辺りなのかも見当がつかない。
またここに戻ってこれるだろうかと思いながら、改めて鳥居を見上げた。
「…絶対に戻ってこよう。もし帰れるなら、どうなってもいい」

(8/7 診断結果と過去回想)
川の底に何かが引っかかっている。近づいてよく見ると、蓋のついたカードケースらしい。
大したものではないがなんとなく気にかかり、水中に潜って拾い上げた。
…こういう時ばかりは、鱗を持っていて良かったと思う。
中には四つ折りにされた手紙がぎっしりと詰まっている。

ほとんどが水でふやけて読めなかったが、何枚か無事なものもあった。
どの手紙も宛名は同じで、時々「神隠し」「黄昏」というワードが出てくる。
(…?この手紙だけ英語だ)
それは短い文章で、これから行くという内容が書かれている。
宛名も差出人も似たような外国語の名前だった。

(…似てると思ったら、姓が一緒なのか。兄弟かな)
不思議とその名前には…特に宛名には、見覚えがあった。
その文字が、響きが、何故かとても懐かしい。
後で乾いたら読み直そうと思いながら手紙をたたみ直し、ケースの中にしまった。


(8/8 診断結果と昨日の続き。
後半は他PCさん(友人関係)とのエンカウント→勝利後のRP)
互いの寂しさを紛らわせるように、ナナイチは岩の異形に様々な話をした。
「…それで、これが大事な人の手紙」
昨日の手紙を出し、見やすいように広げた。
岩が手紙を読む(目がどこにあるのか分からないが)のを見ながら、話を続ける。
「昨日からずっと考えてたんだけど…」

「…ひとつだけ思い出したんだ。この宛名の人、確かに知ってる」
昔からずっと身近にいた。何度も名前を呼んだ。すごく親しい友人か、家族の名前。
「まあそれがわかっても、俺の名前はわかんないままだけど。
俺が出した手紙が混じってないかと思って探したけど、ほとんど読めなかったし」

ふと顔を上げると、遠くに知り合いの姿が見えた。
「あんなところにいたら、また何かに襲われそうだな…。
ちょっと待ってて。すぐ戻ってくる」
異形に声をかけて、手紙をケースにしまいながら立ち上がった。

…やがて、岩の異形の元に戻ってきたナナイチの様子は明らかにおかしかった。
半ば倒れるように座り込み、ぽつりと漏らす。
「ごめん、5分だけ…5分だけでいいから、見ないふりして」
それだけ言うと顔を伏せ、膝を抱いてぎゅっと小さくなる。その肩は小刻みに震えていた。

返り血から何かを察したのか、異形は黙って寄り添った。
ナナイチは嗚咽の切れ目に、ぼそぼそと小声で呟いている。
異形がかろうじて聞き取れたのは、暗く沈んだ一言だけだった。
「…もう、生きたくない」


(8/9 診断結果と昨日の続き)
誰かに揺さぶられて目が覚めた。
…頭が重い。あれから泣き疲れて、そのまま眠ってしまったらしい。
異形が身体を傾け、こちらの様子を伺っている。
「昨日は、なんか、いろいろとごめん。…すごくかっこ悪いな」
次に会えたらもっと楽しい話をすると約束して、優しい異形と別れた。

あてもなく歩き回っていると、突然傍の塀が崩れた。
反射的に頭をかばってそちらを見れば、怪物がこちらに迫ってくる。
呆然と立ち尽くしていると巨大な腕に捕えられた。
(あ、やばい食われる)
とっさに腕に噛みつき、手から抜け出すと足払いの要領で尾を叩きつける。

当たりどころが良かったのか勢いをつけすぎたのか、怪物は転んで起き上がれないようだ。
頭の近くまで歩いて行き、トドメを刺そうと首に手をかけ…
それのふわふわした手触りに、びくりと体が震える。
昨日のことが頭に浮かぶ。急激に失われていく温もりが、滴り落ちる血の感触が蘇る。

気がつけば怪物に背を向けて、一目散に逃げていた。
怖かった。何のためらいもなく怪物を殺そうとしたことが、
それが当たり前になっていたことが怖かった。
そして反射的に生きようと行動を起こしていた自分が、何よりもおぞましかった。


(8/10 診断結果より※死亡イベント)
住人に捕らえられた時も、連れて行かれる時も、抵抗せずに黙って従った。
今の自分は殺されて当然、むしろ相応の罰を受けるだけだ、とも思う。
(この人達は、怪物を殺すことが怖くないのかな。
…怖いわけないか。殺さなければ、自分が死ぬんだから。俺だってそうだったし)

生きるために無害な人々を襲い、住人に恐れられて殺される。
もはや自分は心まで怪物に成り下がってしまった。元の人間には戻れない。
そんな、逃げようのない事実を改めて突きつけられる。
火の爆ぜる音で我に返った。
気がつけば住人はいなくなり、部屋のあちこちに火が放たれている。


(8/11 診断結果より※死亡イベント)
路地を抜けて大通りに出るところで老婆に呼び止められた。
にこにこしながらパンを差し出している。
「…もらっていいの?」
老婆は頷き、ここでしばらく休んでいけと手招きしている。
ナナイチは言われるがままに隣に座った。
住人の優しさがありがたくもあり、心に痛くもあった。

「俺は異形なのに、怖くないの?人に殺されたこともあるし、こっちが殺したこともあるのに…
いや、好きでやってるわけじゃないけど」
受け取ったパンをかじりながらそう尋ねた。住人は異形を殺すことをどう思ってるんだろう。
相手の顔を見るのが怖くて、顔を伏せたまま言葉を続けた。

「なるべく殺したくないって言うのは、やっぱり甘いのかな。
異形として生きていくしかないなら、そうするしか…仕方ない、って…」
ふと口の端が引きつるような違和感を覚える。
口に手をやろうとして、腕が痺れていることに気づいた。いや、体全体に力が入らない。

(ああ、そういう罠だったんだ。そりゃそうか。怪物が優しくされるわけないし)
首に縄がかかるのを感じる。
自分から殺すよりはマシだろうと言い聞かせながら、固く目を閉じる。
力一杯縄が引かれ、俯いていた頭がぐいと持ち上がる。
僅かに唇を動かし、声にならない声でごめんなさいと呟いた。


(8/13 診断結果/結果2より※死亡イベント)
足元をふわふわしたものが通り過ぎる。追いかけたくなるのを堪えて、目の前の電車に乗る。
…前に駅に来た時は、いつまで経っても電車は来なかったはずだけど。
乗客は俺ともう1人しかいない。
この町に金髪の人なんて珍しいな、なんて思いながらその人を見ていたら目が合った。

「強くなりたい?」
瞳孔を細めながら問いかけるその人は、間違いなく俺自身だった。
黙っていると、相手はこちらをじっと見てから首を振った。
「残念だけど、今はまだその時じゃないね」
その言葉と同時に、すっと視界が暗くなる。…毎回これぐらい穏やかに死ねたらいいのに。


(8/14 診断結果より)
またここへ戻ってきたな、と鳥居を見上げる。
空の色は、橋の向こうに行くにつれて徐々に暗くなっている。
「いつか、この橋を渡って帰れたとして。その後、どこに行けばいいんだろう」
記憶に残るあの人の元へ。
それはいったいどこなのだろう。いつになれば、思い出せるのだろう。


(8/17 診断結果より※微グロ)
(誰かが生きるために殺されるのは我慢してるんだから、
自分が生きるために殺すのも我慢してもらわないとおかしい、っていうのは屁理屈かな)
…人を殺し食らうという行為にも、最初ほど抵抗は感じなくなっていた。
せめて残さず綺麗に食べようと、深く牙を突き立てながら考える。

やはり自分は狂っているのかもしれない。
死んでも生き返ると気づいた時から、この身に生えた異形を見た時から、
この異様な町を受け入れた時から既におかしくなっていた。
(それとも、この町に来る前から?
こんな腕輪に頼って、暗号みたいな文字から意味を見出そうとした時から?)


(8/20 診断結果+アイテム犬笛を使用)
(なんとなく持ってきたのはいいけど、これ何に使うんだろう)
ふと昨日拾った笛を取り出して、試しに吹いてみる。
…予想とは裏腹に、甲高く大きな音が鳴った。
慌てて口を離したが、音を聞いたのか向こうから人の群れがやってくるのが見える。
誰もが手に手に武器を持っている。

とんでもないものを呼び寄せてしまった、と武装した人々とは逆方向に逃げ出した。
向こうもこちらに気付いたらしい、背後に大勢の足音が迫ってくるのを感じる。
このままではいずれ追いつかれるだろう。
息を切らしながら走り続けていると、不意に横から腕を引かれて物陰に連れこまれた。


(8/21 診断結果より)
青年と食事を共にする途中、まじまじと「それ」を見つめてしまった。
(俺も死んだ時は、こんな顔してたのかな)
怖かっただろうか。苦しかっただろうか。
いつか人を殺すことにも慣れて、こんなことも思わなくなるんだろうか。

しかし青年に助けられなければ、今頃は逆の立場になっていただろう。
自分を襲った人間に情けをかけるほどお人好しではない。
「恨まないでね、先に手を出したのはそっちだから」
ここはそういう町だから仕方ない。自分とそれに言い聞かせるように呟いた。


(8/24 診断結果より)
「ニャー」
「にゃーん?」
「ニャー」
「にゃにゃーん」
「……」
「ちょっとぐらいこっち来てよ…」
目を凝らしても暗がりの先は見えない。
猫を呼ぶのを諦め、塀の隙間から首を引っこ抜いた。
「今度猫缶でも拾ったら持ってくるかな。そしたら出てくるかもしれないし」


(8/27 診断結果より)
誰が置いていったんだろう、と缶ジュースを開けながら思う。
自分が異形になることを恐れなかったように、
もしかしたら異形を恐れない住人もいるのかもしれない。
…うかつに相手を信じれば殺される。
それでも誰かを信じようとする優しい人が、この町にもまだいるんだろうか。

…そんなことを思いながら、缶の中身を飲み干した。
これを残してくれた誰かに、心の中でお礼を言いながら立ち上がる。
ゴミ箱を探して人通りの多い方へと向かった。
何度か自警団らしい人間とすれ違い、その都度身を隠してやり過ごす。
なんとなく向こうも慌ただしい気がする。


(8/28 診断結果より)
「…死んだ、かと…思った…」
咳き込みながら水を吐き出し、息も絶え絶えに呟く。
毛皮が浮き袋の役割を果たしてなかなか沈まなかったために、
からくも罠から逃れられたらしい。
池からずるずると這い出て、身を隠せそうな木陰に潜り込んだ。

(あの時食べられておいてよかった…っていうのもおかしな話だけど。
でも、生き延びたのはあの子のおかげだよな)
本人に言ったら変に気を遣わせそうだから、黙っておこう。
…そんなことを考えながら、ずぶ濡れになった身体を横たえる。

…気がつけば、消えていたはずの火の玉が辺りを漂っている。この分ならすぐ乾きそうだ。
ついでだからしばらく休もう。
ここなら住人にも見つからないだろうし、少しぐらい別にいいよね…
そんなことを思いながら目を閉じた。


(8/29 診断結果と昨日の続き)
久々に夢を見た。真っ白な中を、誰かと歩いている。
「お前なぁ、ちゃんと顔出しなって」
「やだ。寒い」
「寒いじゃない。顔が見えないと、何を考えてるか分かりにくいんだよ」
「何かあったら言うから」
「そういう問題じゃなくてだな」
「…あんまりごたごた言わないでよ、」

「…口うるさいとこ、父さんそっくり…」
自分の声で目が覚める。
どれぐらい寝ていたんだろう。服はすっかり乾き、指先が冷えている。
芯まで冷たくなる前に動こうと起き上がる。
芝生を抜けて人の多い道を避けて歩きながら、頭の中ではさっきの夢がぐるぐると回っていた。

壁にぶつかって足を止めた。見上げると、いつか見た鳥居が行く手を阻んでいる。
(この壁を越えたら、夢に見たあの人に会えるはずなのに)
…果たして、本当にそうだろうか?
怪物へと変わり果てた姿を見ても、あの人は自分だと分かってくれるだろうか。
黒い疑念が一気に膨れ上がる。

この町を出ても、あの人の元にたどり着くまでに殺されるかもしれない。
そうすれば終わりだ。きっと、やり直しは効かない。
「つまり…ここを出ても、あの人には会えない?」
目を背けてきた事実が突きつけられる。俺はこれから、何を目指せばいいんだろう?


(9/8 診断結果より)
頰に柔らかいものが触れる。優しく撫でる手は、記憶にないはずなのにどこか懐かしかった。
…誰かの呼ぶ声がする。
(誰?――なの?)
目を開けて確かめたいのに、まぶたが重い。意識がずるずると沈んでいく。
再び眠りに落ちる直前、おやすみと囁く声が聞こえた気がした。


(9/10 診断結果より)
蝸牛と目が合った。それだけでも奇妙な体験だが、その蝸牛には目が三つあった。
「君の目はいくつ?」
彼は首らしき部位を傾げて尋ねる。
呆気にとられたまましばらく見つめ合っていたが、やがて蝸牛はのそのそと去っていった。
…ここはそういう町だ、と改めて思い知らされる。


(9/12 診断結果より)
「ごめんね、でも俺も生きたいから」
動かなくなった怪物の角を撫でながら詫びた。
自分を殺そうとしたとはいえ、悪意のない相手を手にかけるのは気がひける。
「君は謝らなくてもいいよ、お互い生きるためには仕方がないんだ。
…って言っても、割り切れないんだろうな。この子」


(9/14 診断結果より)
電車の中には以時と同じように、自分自身が腰掛けていた。…いや、よく見れば以前とは違う。
向こうの自分はより深い色の目をしていて、その瞳孔は針のように細い。
鋭く研ぎ澄まされた視線、という表現が頭に浮かんだ。
「強くなりたい?」

そう言って彼が立ち上がり、正面から顔をあわせる。
…途端に激しい目眩がして、思わずこめかみを抑えた。
足に力が入らない。身体が傾いだのを最後に、意識がぷつりと途絶えた。


(9/15 ハンドアウト診断結果より)
猫を見送りながら、今の自分は猫に似ていると思った。
これで火玉がなくて、猫の耳や爪があれば完璧なんだけど。
塀から飛び降りると、思いの外強い衝撃が足に伝わる。
まだ少し頭もくらくらする。
しばらく休める場所はないだろうかと、ふらつきながら歩き始めた。

(この町に来てから、もうずいぶん経った気がする)
…人目につかない路地裏に座り込み、ぼんやりと空を見上げる。
いつまでも変わらない空の色にも、殺したり殺されたりの生活にもすっかり慣れてしまった。
(このままここで暮らすのも、いいかもしれない)
そんなことさえ思う。

『珍しく弱気だな。お前らしくもない』
…いつの間にか、隣に誰か座っている。
(だって、帰る場所もわからないし)
『昔のことも少しずつ思い出してきてるんだろう?』
(怪物になって帰っても、あの人には会えないだろうし)
『やってみなきゃわからないさ。僕は待ってるから』

(待ってるって… え?)
はっと我に帰る。辺りには誰もいない。夢でも見ていたんだろうか。
あの人が座っていた跡に、缶ジュースと花が供えてあった。


(9/16 別の診断を引用した後付けプロローグ)
僕の故郷では、ある時こんな話が流行った。
『深夜1人でトンネルに入り、怪物の名前を呼びながらカッターでバツ印を彫る。
この時、トンネルに入ってから出るまで誰にも見られてはいけない。
これを4日間繰り返すと、5日目に獣の怪物が現れて異世界に連れて行かれる』

今でこそありがちな都市伝説だと笑い飛ばせるが、子供の頃はみんな信じていた。
近辺で失踪者が出ると、怪物に連れて行かれたんだと大騒ぎになった。
やがて時は過ぎ、僕は憧れの地で暮らすために海を渡った。
あの頃の好奇心は今も変わらず、仕事の合間に都市伝説の類を収集している。

そんな中、僕は神隠しの都市伝説に再び出会った。
幾つかのバリエーションがあったが、どこかに連れて行かれるという点は共通しているようだ。
そして、どの話にも夕暮れ時が絡んでいた。
連れて行かれると化け物にされる、という話から「黄昏町の怪物」とも呼ばれているらしい。

…続きはページが破られていて読めなかった。
兄さんがいなくなったのは、この噂を調べに行ったせいか。
俺に言えば止められるからって、黙って出かけることはないだろうに。
あの人のことだから、危ない真似はしないだろうけど…。

書きかけのノートを閉じ、傍らに置かれていた銀色の腕輪を手に取った。
…とにかく、兄さんの知り合いに当たってみよう。これを見せれば何か分かるかもしれない。
「それにしても、『黄昏町の怪物』か…。気味が悪いな」


(9/22 診断結果より)
息を深く吸って池の底に潜る。
何度も水中に落とされていたせいか、泳ぐのにもすっかり慣れてしまった。
水底に沈んでいた袋を引き上げ、身を隠せそうな岸辺を探す。
袋は固く結ばれていたおかげで、中身は濡れていないようだ。
手が乾くのを待ってから中身を取り出すと、

ドラマの中でしか見たことのない分厚い札束が出てきた。
「…何これ」
予想外の落し物にしばし言葉を失う。
しかし使い方によっては役立ちそうだ。
例えば、住人にお金を渡して食べ物を買ってきてもらうとか。
ナナイチはあれこれ思案しながら元通り固く袋の口を縛り、服の下に隠した。


(9/23 診断結果より※死亡イベント)
男を上から下までざっと見る。長い爪以外に目立った異形もない。
自分でも容易く殺せるだろうし、放っておいてもすぐ死んでしまいそうだ。
「けど、それでいいの?君はまだ、人間みたいな見た目してるし。
爪さえ何とかしたら、ここで暮らすなり町を出るなり何なり出来ると思うけど」

男は俯いたまま答えない。それでいいなら別にいいけど、と背を向ける。
「…殺さないのか?」
「今はお腹空いてないし。なんか、良い事言った後で襲うのも気分悪いから」
すると背後で顔を上げる気配がして、遠慮がちに声を掛けられた。
「そうか。…なら、頼みがあるんだが」

振り返ると、男は目の前に立っていた。…その鋭い爪を、ナナイチの胸に突き刺して。
驚きと痛みで瞳孔がぐっと細くなり、やがてゆっくりと開かれていく。
「…生きるために殺されてくれ」
絞り出すような男の声も、もう聞こえていなかった。


(9/24 ハンドアウト診断結果より)
赤い塊と汁に塗れた、長い爪をまじまじと見つめる。
服の裾で手を拭こうとして、この前拾った袋がないことに気づいた。
あの男に殺された時、一緒に取られたんだろうか。
「…これは、あれか。強盗殺人?」
油断していた俺も悪いが、そこまでしなくてもいいだろうに。

釈然としない思いのまま畑を抜ける。立派な身なりの男と目が合った。
向こうもこちらを認めると、得意げな笑みを浮かべて声を掛けてきた。
彼が口を開くたびに牙がちらちらと覗く。男の話に頷きかけて、慌てて襟を下げた。
「あ、待って。牙なら俺も持ってるから。殺されても意味ないから」


(9/26 診断結果より)
どこからか、耳慣れない音楽が聞こえてくる。
何の歌だろうかと辺りを見回していると、沢蟹に声をかけられた。
「聞こえる?祭囃子の音」
「まつりばやし…?」
ってことは、黄昏町のお祭りか。
独特のリズムと相まって、なんだか不安な気分にさせられる。

(…いや、黄昏町だけじゃなくて、この国のお祭りはみんな暗いのかも)
せっかくだから一度見てみようか。お祭りならそこまで危ないこともないだろう…たぶん。
不安をいまいち打ち消せないまま、沢蟹に教えてもらった方角へと向かった。


(9/28 診断結果昨日の続き)
小路の両側には所狭しと屋台が並んでいる。
行きかう人々はみんな楽しそうで、敵意は感じられない。
最初は不気味だった祭囃子も、慣れれば気にならなくなってきた。
買った飴細工を手でもてあそびつつ(あんまりにも自分そっくりで食べづらい)
次はどこに行こうかと考えながら歩く。

屋台の切れ目、柳の根元で誰かが灯りを点している。
(あれも出店なのかな)
気になって近寄ると、ちんまりとした看板が立てかけてある。
…占い、だろうか。文字が崩れていて読みづらい。
「…賽子を、どうぞ」
その人が顔を上げて、俺の手に賽子を握らせる。

言われるがままに賽子を振ると、黒い目が2つ。…白髪の占い師がゆっくりと首を振る。
どうも出目が良くなかったらしい。ここは占いの出店だから、つまり運がないってことか。
(まあ、いいか。お祭りだし)
浮かれた気分が抜けきらないまま一枚の硬貨を渡し、その場を後にした。


(10/1 診断結果より※死亡イベント)
よくわからないまま形抜き菓子を受け取り、見よう見まねで針を入れる。
(…これ、爪でやったほうが早いな)
途中でこっそり持ち替え、慎重に切り抜いていく。
果たして異形を使ったのが功を奏したのか、少々いびつながらも形抜きが出来た。
「上手いもんだ。初めてとは思えんな」

屋台の店主も感嘆の声を上げる。自分でも奇跡だと思う。
なんとなく誇らしいような気分で、最後の硬貨を渡す。
…屋台を離れると、辺りは次第に暗く、色あせていく。
(お祭りが終わるんだ。…短かったけど、楽しかったな)
お囃子の音が遠ざかり、やがて何も聞こえなくなった。


(10/4 診断結果より)
暗闇の向こうから鳴き声がする。こっちにおいでと呼ばれてる気がする。
「無理だよ、通れないし」
"大丈夫。今の君なら行けるよ"
「そう言われてもなぁ…」
"ためらわないで。行こう"
試しに横向きになって身体を押し込む。…意外にもするりと全身が入った。

すぐつっかえるだろうという予想に反して、狭かった隙間は歩くほどに徐々に広くなっていく。次第に塀も高くなり、いまや隙間というより細い路地のようだ。
先は真っ暗で見えないが、不思議と恐怖は感じなかった。
(どこまで行くんだろう。もう、町を横断しそうなぐらい歩いたけど)

遠くから、誰かの声がする。いつも励ましてくれた人の声。
「…、おいで。早く。…アレン、こっちにおいで」
聞き覚えのない、けれど懐かしい名前。その人は確かに自分を呼んでいる。
(…兄さん、そこにいるの?)
ずっと探していた、大切な家族の声。自然と歩みが早くなる。
*
…町が夕暮れに染まる中、僕は1人家路を急いでいた。
ほんの2,3日家を空けるつもりが、気が付けば1週間以上経つ。
あいつはどうしているだろう。誰にも言えずに出てきたから、きっと心配しているだろう。
弟への言い訳を考えていると、塀の隙間から出てきた猫と目があった。

かと思うと、尻尾をピンと立て駆け寄ってきた。
青紫の目でこちらを見上げ、足に擦り寄って離れない。
目のすぐ上まで黒い模様があり、フードを被っているようにも見える。
「人懐っこいけど、首輪はしてないな…。迷子?捨てられた?」
…なんて尋ねたところで猫が答えるわけもない。

そのままでは蹴り飛ばしてしまいそうで、仕方なく抱き上げた。
「飼い主が見つかるまで、家に来る?」
そう聞くとやっと大人しくなった。
長い間家を空けた上に猫を連れて帰ったとなれば、あいつは何と言うだろう。
更なる言い訳を考えながら歩き出す僕の頭上で、一番星が輝いていた。
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