一次創作、時々版権ネタ。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
推奨レベル5~6
我々の村 ストリに例年より多くの狼が現れ、
家畜が襲われています。
報酬は銀貨一千枚、冒険者の応援を切に願います。
ストリ聖北教会司祭 フォルジョ
(貼り紙より抜粋)
ネタバレ・スクショ大量につきご注意ください。
我々の村 ストリに例年より多くの狼が現れ、
家畜が襲われています。
報酬は銀貨一千枚、冒険者の応援を切に願います。
ストリ聖北教会司祭 フォルジョ
(貼り紙より抜粋)
ネタバレ・スクショ大量につきご注意ください。
「恨みはないよ。狩りをしなければ死んでしまうのは冒険者も同じ――
次は獲物のたくさんいる世界に生まれ変わるんだよ」
エゼル「平均的な群れの数は倒した。あらかた片付いただろう」
ラルフ「……で、何に話しかけてんだ」
ソニア「狼に逆恨みされたら困るからね。同情してるふりでもしてやろうかと思って」
エゼル「そこ2人、聞いてるか?あとは群れのリーダーを倒せば依頼完了……」
イヴァン「……! おい、あれ!」
お前も話を聞け、と言いかけたエゼルより早く、
イヴァンの指さす方を見たソニアが驚きの声を上げる。
ソニア「ドラゴン!?あんなのが出るなんて聞いてないよ!?」
エゼル「あれは、このストリの山岳に昔から住んでる竜らしい。
狼とは関係がないから、依頼主も話していなかったんだろう」
ドロシー「あの大きさ……、上位種じゃないですか?
知っていたならもっと早く教えてください」
エゼル「そう焦るなよ。心配しなくても、人間に害はない。
ストリの猟師の話では、人間はおろか家畜も襲ったことがないらしい。
はるか山岳の高みにいて、たまに人里に飛んでくる。ついたあだ名が……」
ソニア「あ、高度を上げる!」
エゼル「……”お嬢”だとさ。って、聞いてないのかよ!」
竜は大きな翼を羽ばたかせながら上昇していき、やがて見えなくなった。
冒険者達もまた本来の依頼に取り掛かる。
一行が奥へと足を進める中、イヴァンだけはその場にとどまって空を見上げていた。
ミアト「……行こう、イヴァン」
ドロシー「どうかしたのですか?」
イヴァン「今、誰かの声が……いや、気のせいだな。すぐ行くよ」
その後、狼もあらかた倒し終える頃には日もすっかり傾いてきていた。
取り逃した生き残りを警戒して山の入り口に残っていたイヴァンとソニアの元に、
依頼人に報告を終えたドロシーが戻ってきた。
ドロシー「依頼完了です。皆さんはもう、打ち上げを始める勢いですよ」
ソニア「あたしを置いて何してるのよ!もう見張りなんかサボって戻ってもいい?」
ドロシー「そういうと思ってました。私が代わりますから、村で休んでていいですよ」
ソニア「さすがドロシー、わかってるじゃん!それじゃ、お願いね!」
ドロシー「相変わらず調子がいいんですから……。
イヴァンも、適当に切り上げた方がいいですよ」
振り返って声をかけたが反応がない。木に寄りかかって眠っているようだ。
あなたまで気が緩みすぎですよ、と小言を漏らしながら傍により
揺り起こそうと手をかけ……
一夜明け、依頼主でもある教会の一室。
狼退治の報酬も受け取ったが、イヴァンは未だに目を覚まさない。
このままリューンに帰るのもためらわれた。
エゼル「かなりの熱だな。狼にやられた傷もないし、流行病でもなさそうだ」
ドロシー「どうしたんでしょうか?急に体調を崩すなんて……」
ミアト「……高熱、意識の混濁、突然の発症……。エゼル、心当たりは?」
エゼル「残念ながら、こんな症状は聞いたことがない。
無理に動かさず、様子を見た方がいいかもしれないな」
扉が音もなくすっと開き、司祭が入ってきた。
具合が良くならないことを伝え、診てもらうと意外な言葉が返ってきた。
司祭「ドロシーさん。昨夜の宴のおり、竜を見たと話しておられましたね」
「狼退治に山すそに向かった時の事ですね。それが何か?」
司祭「本当にまれなことなのですが、これに似た症状を見たことがございます」
動乱期の本には”竜熱”という名で記されている珍しい病だ、と話した。
強力な炎の精霊を宿す竜に接触することが原因で、
抵抗力の弱い子供や、精霊の力に敏感なものがかかるという。
ソニア「それだったら、イヴァンよりもあたしがかかりそうなものだけど」
ラルフ「精霊から嫌われてんじゃねえの?」
ソニア「な、何さその言い方!」
ドロシー「2人ともやめなさい!言い争いをしている場合ですか!」
ミアト「……ごめんなさい、司祭さん。続きを」
司祭「竜熱だった場合、高熱が続き意識が混濁し……
最終的には……、いえ、まだそれと決まったわけでは」
イヴァン「……いや、どうやらその、竜熱……かもしれない」
不意に放たれた発言の主に視線が集まる。
イヴァンはふらつきながら身を起こそうとして、傍にいたドロシーに押しとどめられた。
ドロシー「イヴァン、目が覚めたのですか」
ラルフ「倒れたと思ったら聞き耳か。ちゃっかりしてやがる」
イヴァン「司祭さんの話の、途中から……だけどな。
それで……竜の出てくる夢、だったよな?ずっと見ていた気がする」
ドロシー「とにかく、今は安静にしていてください。……それで、司祭さま。治療法は?」
司祭「かつて竜熱にかかった子供の父親が、ストリの山岳地帯に居を構えています」
ミアト「その人に会えば、治療できる……?」
司祭「かもしれません。
とにかく竜熱は、早期治療が全てと聞きます。精霊力のバランスを取り戻せば……」
エゼル「……急いだ方がいい。
この地の精霊力には、歪みのようなものを感じる。俺も……」
そこでぐっと声を低くし、仲間にしか聞こえないように続けた。
エゼル「(あの時の呪いが、こんな形で役に立つとはな。それには感謝するとして……)
その人物を訪ねて、治療法を求めるか。リューンに帰って、別の方法に賭けるか、だな」
イヴァン「……早期治療が大事、なんだよな。だったらその人に会おう。
って言っても、僕は何もできそうにないけど」
ドロシー「当然です。病人は休むのが仕事ですから。私達に任せてください」
司祭「その人物ですが、ロークという名です。精霊使いの素養がありました。
竜熱のことを聞くには一番いい相手でしょう」
エゼル「ここから先に、司祭の話していたロークという人物の小屋があるはずだ」
ドロシー「大丈夫ですか?肩を貸しますから、無理しないで行きましょう」
イヴァン「ああ、少し歩くぐらいなら平気だ。ドロシーこそ、僕より小さいのに無理するなよ」
ミアト「……なんでイヴァンが、竜熱にかかった……?
子供なら、ソニアもいる。精霊に詳しい人なら、エゼルも……」
エゼル「俺が平気だったのは置いといて。イヴァンが発症したのは、おそらく――」
ソニア「……皆、声を抑えて。歩きながら聞いて。
後ろから、何かの気配がする。それも複数。誰かにつけられてるよ」
ミアト「……本当?」
エゼル「病人がいる以上、引き離すのは無理だ。気づいてないふりをして、相手の出方を待とう。
ソニアはそのまま周囲の警戒を頼む」
ソニア「言われなくても」
足は止めないまま、慎重に後方の気配を探る。
ソニア「気配の消し方がうますぎる。そこいらの下級妖魔じゃないね。
距離は開いているから、白兵戦をしかけたいわけじゃなさそう」
ラルフ「それだけわかりゃ十分だ。だが狙撃されたら厄介だな。真っ先にあいつらが的になる」
言いながらちらりと後ろを見る。
視線の先にはドロシーの肩を借りて、ゆっくりと歩みを進めるイヴァンの姿があった。
――こちらの視線に気づいたのか、イヴァンはひとつ頷いて言った。
イヴァン「今ならまだ僕も戦える。心配しなくても、足手まといにはならないよ」
ドロシー「だから、無茶はいけませんってば」
ソニア「すぐに何かを仕掛けてくる気配はないから、安心して……とは言えないけど。
まあ、そう神経質になる必要もなさそうだよ」
ミアト「……吊り橋?」
エゼル「御者の話では、吊り橋を渡った向こうに小屋があるらしい」
ドロシー「……吊り橋って、もう少しどうにかならないものですかね」
イヴァン「どうにかって、吊り橋を架けるしかないから吊り橋じゃないのか?」
ドロシー「それは分かってますけど、いや、怖いわけじゃないんですよ?
病人を庇いながらわたるのには不便だなと思っただけで、怖いわけないじゃないですか」
エゼル「結局は怖いのか」
イヴァン「それなら1人で歩くよ。これぐらいの距離なら大したことないしな」
ミアト「それはそれで、危ない……誰か、イヴァンに手を貸して……ん!?」
ラルフ「……おい、イヴァン?大丈夫か!?」
ドロシーから離れて歩き出したが、数歩もいかないうちによろめいてしまう。
……のみならず、そのまま倒れて動かなくなった。
少女「――よかった。苦しそうだったから、少し心配したぞ」
イヴァン「え……っ、ここはどこだ?僕は確か……それよりも、お前は?」
少女「うん……?そうだな、そっちの国では何と呼ばれているんだったか……
まあ、こちらの言い方でいいか」
イヴァン「驚いたな。人間の少女にしか見えないけど、本当にドラゴンなのか?」
フラルカ「うん、人間の言葉を話そうと思うと近い姿に変わらなくてはいけなくてな。
きみは――人間たちには、イヴァンと呼ばれていたっけ」
イヴァンはひとつ頷いて、少女の姿をしたドラゴンに尋ねた。
イヴァン「ずっとドラゴンの夢を見ていた。その続きか?」
フラルカ「声がするから来てみたら、ここで竜になりかけのきみが苦しんでいた」
イヴァン「竜になりかけ?どういうことだ?」
フラルカ「私の声に答えただろう?
きみの身体が竜だった時代を思い出して、竜に戻ろうとしていたのだと思ったが」
イヴァン「じゃあ、やっぱりあの声は……。
いや、それよりも”竜に戻る”?いったい何のことだ?」
フラルカ「まあ、簡単だ。竜を思い出すのは難しくないから試してみるといい。
まずはこう、翼を開いて……」
イヴァン「いや、だから。話を聞いてくれ。竜になるじゃなくって……」
フラルカ「――そう、そんな感じ。初めてにしてはうまいな」
イヴァン「待っ……フラルカ、これ、飛んでる……!?」
傍から聞こえてきた声に、ふと我に返る。
改めて自分を見てみれば、ドロシーに支えられて吊り橋の上にいた。
イヴァン「(僕は……、ずっと気を失っていたのか)」
ドロシー「また翼がどうとか、竜がどうとか言ってたけど、例の夢ですか?」
イヴァン「ああ。しかも今度は女の人が出てきた」
ドロシー「女の人?話が見えませんね。……まさか、あなたまでエゼルに毒されて」
イヴァン「どんな想像してるんだよ。お前こそあいつに影響を受けてるんじゃないのか」
エゼル「おーい、そこの2人。全部聞こえてるぞ。
俺こそが諸悪の根源みたいな言い方するなよ。こんなに善良な人間、そうそういないぞ」
ソニア「息をするように嘘を吐く人間が信用できるわけないじゃん」
ラルフ「善良でも人間でもねえだろ」
この状況下でも変わらない仲間のやり取りに思わず苦笑する。
少しだけ顔を上げ、改めて言った。
イヴァン「……ありがとう。迷惑かけてごめん」
ドロシー「反省しているなら、意地を張らずに頼ってください。
どれだけ心配したと思ってるんですか」
イヴァン「意地を張ってたわけじゃ……いや、悪かったよ」
無理をしていたつもりはなかった。少し歩くぐらいなら平気だと思っていた。
ただ、自分が考える以上に体力が落ちている。
この状況はあまり楽観視できないかもしれない――とイヴァンは初めて思った。
橋を渡り先へ行くと、開けた場所に出た。
小屋がポツリと立っている。
声をかけてみると、小屋の裏手から男性が現れた。
一行はふもとの村からやってきたことを告げた。
男性はロークと名乗り、小屋の中に招き入れてくれた。
……イヴァンの様子を見て、こちらの身に何が起きたのかを察してくれたようだった。
ローク「散らかってて悪いが、その辺に腰かけてくれ。竜熱の患者は、こっちのベッドに」
ドロシー「ありがとうございます。……それで、ロークさん。
単刀直入にお伺いしますが、あなたなら竜熱を治せるんですか?」
ローク「確かに、私は竜熱を研究している。数年前からずっとだ。
でも、まだ完全な治療法じゃない。全力を尽くすが、徒労に終わるかもしれん」
ドロシー「……わかりました。私達も、出来ることがあれば協力します」
症状や感染経路は一行が聞いていた通りだった。
竜に接触して炎の精霊が活性化することにより、高熱や意識の混濁などの症状が起きる。
発症者は竜の夢を見ること、また難病であることから、
昔から”竜熱が進行すると竜になってしまう”などと恐れられていた。
現在に残されている治療方法は僅かだが、ロークは精霊魔法で生成した薬により
水と氷の精霊を活性化させる方法を取っているという。
ドロシー「風邪の時に、額に乗せる氷みたいなものでしょうか?」
ソニア「そんな単純な受け取り方でいいのかな」
「確実な治療法がない以上、単純な方法で治療していくしかないんだろう」
ローク「方法はシンプルだが、薬はこれから調合することになる。
できるだけ急ぐが、1日はかかるだろう。あんた達はここで待っていてくれ」
突如、窓を破って飛び込んできた飛来物がテーブルに突き刺さる。
冒険者は反射的に身を伏せ、割れた窓に忍び寄って外の気配を伺った。
ドロシー「行きに感じた追跡者でしょうか?」
ソニア「この矢、相当強い弓だね。腕も悪くない。こっちが小屋に入るのを待ってたんだ」
ローク「たぶん、その矢はストリ山地のエルフ族だ。
引っ越してきた当初から、たびたび土地のエルフが警告にやってきたんだ」
ミアト「警告……にしては、やりすぎじゃ……?」
冒険者たちは窓の外の気配を慎重に探った。
木を巧みに利用する襲撃者の位置ははっきりとは分からなかった。
エゼル「エルフお得意の姿隠しの術か。ソニア、相手がどんな弓を使っているかわかるか?」
ソニア「この矢から見て、相当大型の弓だね。連射よりも威力を重視したものだよ。
慎重に狙いを定める集中力がいる。狙撃に向いてるよ」
エゼル「いやに矢が長いと思ったが、やはりそうか。それなら突破する方法はある」
ラルフ「最初の一撃はもらうだろうが、向こうの居場所は掴めるか」
ドロシー「危険ですが、それしかないですね。そうとなれば、打って出ましょう」
エゼル「(エルフの魔法が勝るか、宵闇と鮮血の呪いを受けたこの身が滅びを許さないか――
出ればすぐにわかることだ)」
2に続きます。
PR
この記事にコメントする
カレンダー
最新記事
ブログ内検索
P R