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一次創作、時々版権ネタ。
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推奨レベル4 子供PC1人用

それはゴブリン退治の帰り道。
消耗品を補充する為道具屋へと一人向かったその時に起きてしまった
悔しすぎるアクシデントがきっかけだった……。
(貼り紙より抜粋)

ネタバレ・スクショ大量につきご注意ください。



スズリは仲間達とゴブリン退治の依頼を終えて、宿に戻った。
打ち上げ時は普通だった。いや、普通に振る舞っていた……

スズリ「(今はあそこには……私を知っている人がいるところには、帰りたくない。
いらない荷物は全部置いてきちゃったし、今更もう戻れないよ)」

一体なぜ、スズリがこのような衝動に駆られたのか。
戦いにて消耗した傷薬を補充するために、最年少である自分が町の道具屋へと
一人足を運んだその時に起きた時のこと――



足早に道具屋へ向かおうとするスズリ。
そこにクスクス……という笑い声が聞こえた。
その方向を振り向けば、自分を指さして笑う同い年位の少年少女がいた。

「ねぇ、アリス……あの子を見てよ。あんな汚いカッコして、普通に街中を歩いてるよ?」
「あれが噂の冒険者ですわね。本当、汚らしい!
しかも、あの歳で冒険者?くすくす……馬鹿みたい」

アリスと呼ばれた少女と少年は小奇麗な身なりをしている。
依頼帰りで泥や返り血にまみれたスズリとは大違いだ。

「そういえば冒険者って依頼人に媚売って金を貰うのよね?
路上で男に体売って金を貰う娼婦と同じ汚らわしい生き物……。
名目上、街を守っていると言う役立たず自警団よりも役に立たないゴミね」
「なるほどね……。もしかしたら、あの年で体も売っちゃってるんじゃない?娼婦のようにさ」



スズリ「(さっきから言わせておけば……!)
ちょっとあんた達、ふざけるんじゃないわよっ!」

スズリは少年の顔めがけて殴りかかったが、
見回りの自警団員により寸でのところで止められてしまった。

少女「ああっ、自警団のおじ様!わたくしたち、何もしていないのに
こちらの方がいきなり暴力を振るってきたのです!」
自警団「……本当かね、君?見たところ冒険者をしているのか?
こうなった以上、君の宿の責任者を呼ばないと……」
スズリ「(さっきまで役に立たず自警団って言ってたくせに……いや、それよりも私は何もしてないのに!)
私はただ、こいつらが挑発するからつい……!」
少年「自警団のおじ様、もういいですよ。僕たちはこの程度のことで怒ってないですよ。
……土下座して謝ってくれたらそれでいいです」
少女「わたくしも同意ですわ」
自警団「そうか。君達の英断に感謝する。ほら、土下座して謝りなさい」
スズリ「そんなことできるわけないでしょ!私は悪くないわ!
この二人が私のことを馬鹿にするから、ついカッとなっただけよ!」

スズリと自警団の男はにらみ合いを始めた。
その状況を見て少年少女は目を合わせると目を合わせるとにやりと笑う。



少年「冒険者さんが折れる気がないなら、僕たちが折れるしかないでしょう?
ただそれだけのことですよ」
自警団「何とも素晴らしい英断だ!
……しかし、君!次にこのようなことがあったら責任者の宿に通報するぞ!」

スズリにくぎを刺すと自警団は見回りに戻っていった。
その姿が見えなくなると、少年少女はまた笑みを浮かべる。




少年少女は高笑いをしながら街の中へと消えていった。
ただ歯を食いしばり、利き手に拳を作りその場にたたずむスズリ――

その拳からは、いつの間にか血がにじんでいた。



(……私だってこの一件だけで旅に出ようなんて思ったわけじゃない。
ただでさえ、「変人」のように見られる事が多い冒険者。
それに加えて年端のいかない子供が冒険者をしていると、人々は好奇の目で私を見る)

スズリ「周りと違うことがそんなにおかしいの?普通に生きられないことがそんなに悪い?
私はこんな思いをするために冒険者になったわけじゃない……
ううん、私は本当に冒険者になりたかったの?」

(私の居場所を探すため、私のすべきことを探すため、
皆の元には戻らない覚悟で旅に出ることを決めた)



出口の見えない森の中を、ただひたすら北へと歩いていく。
……ふと、東から何者かの気配を感じた。
スズリは身構えて戦闘態勢を取る。



「さあ?でもまあ、ガキが夜中に森をうろつくわけもないし……」
「そうだな、ガキがこの森をすぐに抜けられると思わないし、まずはこいつを連れて帰るか!」

相談の後2人の盗賊が襲いかかってきたが、スズリはたやすくそれを撃退した。
2人を近くの大木にまとめて縛り付けると、何が起きているのか尋問することにした。

スズリ「……だいたいの見当はついてるけど。『逃げ出したガキ』っていうのは何なの?」
盗賊「いや、その……実は昼間にお嬢ちゃんぐらいの年齢のガキを誘拐しましてね……
だけど俺らの見張りを掻い潜り、1匹だけ逃げたんすよ……」

誘拐したのは貴族の子供だが、顔はよく知らなかったらしい。
スズリは彼らの馬鹿さ加減に呆れると同時に、ある確信を抱いた。

スズリ「あなた達の仲間と首領は?他に仲間がいるのは分かっているのよ」



刃を月の光にかざして近づけると、盗賊はたやすく白状した。
東にアジトがあり、下っ端が9人と親分と呼ぶ女性が1人。
うち2人はここにいるので、アジトに残っているのは多くても7人と首領のみだ。

スズリ「(ふーん、護身用のナイフでも、盗賊を脅しつけるのには有効みたいだね……)
さて、これで聞きたいことはだいたい聞けたかな」

刃をしまい、盗賊を勢いよく殴りつけて昏倒させる。
さすがに情報を引き出して殺すほど腐ってはいないし、それほどナイフの扱いにも慣れていない。

スズリ「……もう大丈夫だよ。そんなところに隠れてないで出てきなさい」



少女「……ずっと気づいていたのね?」
スズリ「昔から気配には敏感なの。チンピラ以外にもう1人いるってすぐわかったよ。
……それにしても、誘拐されたのがあなた達だったなんてね」
少女「……。助けて、くれませんか……?
日中のことは謝ります。だから、だから……ジャックを助けてください!」
スズリ「嫌だよ。あなた、どこまで図々しいの?
娼婦のように汚れていて、死んだほうがいいような奴に頼むなんてね。頭おかしいんじゃない?
役立たずの自警団を盾にした時みたいに、今度は私に頼るつもり?」

スズリは日中の言葉を返すように責めたてた後、一息ついて続けた。

スズリ「……それに私は、冒険者をやめるかもしれないの」
少女「そ、それはわたくしのせいですか?わたくし……そんなつもりは――!」
スズリ「うぬぼれないで。あなただけが理由じゃない。
……冒険者なんて、最初から私には無理だったんだよ」

そこまで言うと、スズリは少女から目をそらしてうつむいた。

少女「あなたが望むことはなんですか?わたくしの土下座ですか?
いいえ……何でもいたします、だから……お願いします……」
スズリ「(プライドの高い彼女なりに譲歩してる……)
もういいよ。あなたの土下座なんて何の価値もない。
今のところはまだ冒険者だし、これが最後の依頼になるかもしれないから助けてあげる」

彼女は名家であるワンダーランド家の一人娘で、アリスだと改めて名乗った。
日中に見たもう1人の少年はジャックという名で、同じく名家であるビーンズ家の次男坊だといった。
2人はお忍びで街中を散策している最中だったという。

スズリ「(ワンダーランド家のアリスと、ビーンズ家のジャックか。
言われてみれば、どこかで聞いたことがあるような気がする。よっぽど有名な家柄なんだね)
……それで、筋金入りのお嬢様が、どうしてこんなことになったの?」
アリス「あなたみたいに自由奔放に生きている人にはわからないかもしれませんが、
2人で街中を歩く、それはわたくし達にとって本当に素敵な夢でした。
綿密な計画を立ててお付きの者たちを振り切って、外を2人で歩いたときは本当に幸せでした……
そんなときにあなたが、わたくしたちの前を通られました。泥と血に汚れたその格好で……」



スズリ「だからって、あそこまで言わなくても……。まあいいや、他に知ってることはある?」

他に、盗賊がアジトにしている小屋の情報も教えてもらった。
一通りの話を終えた後、アリスから報酬として高価そうなピアスを受け取った。

アリス「あの……スズリさん、わたくしも同行します。案内ぐらいは役に立ちますから」
スズリ「そうだね、じゃあお願いするよ。いざって時にもすぐに助けられるし。
でも、なるべく私から離れないでね」

盗賊のアジトへ向かう道すがら、スズリは小声で謝った。

スズリ「……ごめん、さっきはちょっと言いすぎたよ。
でも、嘘でも死ねばいいなんて言わないでほしいな」

(私も冒険者に憧れていた。強くなりたかった。今は、どうしたいのか、まだわからないけど)

2へ続きます。
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