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一次創作、時々版権ネタ。
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このシナリオ、
フォルダ名とリドミのシナリオ名は「みえないともだち」
ゴシップとギルド登録は「ミエナイトモダチ」
と、シナリオ名の表記にブレがあります。今回はカタカナ表記で統一してます。
ちなみに貼り紙上は「聖北教会よりお知らせ」となっています。

ネタバレ・スクショ大量につきご注意ください。




グリグオリグ修道院跡が見えてくるころには、既に日も暮れかかっていた。

ルトラ「正直……ちょっとこたえました。村長のあの言葉……」
アッシュ「(根っからの箱入りで、おまけに聖北を信じ切ってる馬鹿か。やっぱり受けなきゃよかったな)」
ルトラ「教会の教えを拒むことは、村長なりの信仰への姿勢があってのことだと思います――
けど、だからと言ってメアリに対する仕打ちを正当化していいんでしょうか?」
キャリー「それは違うよ、ルトラさん。
村長の信仰とメアリへの態度は全く別物で、混同するのは筋違いだよ」
ルトラ「とりあえず目的地は目の前です。日が暮れる前にこの林を抜けてしまいましょう」

ウォルト「(……なんだ?今、バイザーに一瞬反応が……)」
ルトラ「――あれ?どうかしましたか、ウォルトさん?」
ウォルト「(……いや、何かがいた形跡はないな。機械にもあれっきり反応はない。
ただの誤動作か、俺の見間違いか……?)」
イズミ「なにしてるんだウォルト、ルトラさんも。さっさと来ないと日が暮れるぞ」
ウォルト「――ああ、今行くって。
行こう、ルトラさん。アイツら先に行かせたら今晩俺達飯抜きにされちまうぜ」
ルトラ「ちょっとウォルトさん! 冗談じゃないですよ全く。依頼人は私なんですよ!」

2人は大慌てで先を行く仲間の後を追いかける。



その後は何事もなく林を抜け、修道院跡の正門にキャンプを張った。
日も落ちたころ、これからのことについて相談した。

ルトラ「まず、明日のお昼までにはこの修道院全体を歩き回って、全体的な損壊の度合いを調査します。
その後は、流動的に……ですね。書庫が残っていれば、私は文献の調査を行いますので
皆さんにはガレキ撤去などの作業をしていただくことになると思います」
シュライ「年代なんかは、建造様式から見てもルトラさんの言っていた通りだ。
堅牢に作られているのは、たぶん要塞としての意味もあったからだろう。
紛争か何かに巻き込まれて廃棄されたと考えるのが妥当な線だな」
ウォルト「書庫や宝物庫が残っている可能性は?」
シュライ「一言でいえば望み薄だ。たとえ紛争時に残されていたとしても、
これだけ放置された期間が長ければ、普通は盗賊の餌食になる」
ウォルト「なら、資料室も荒らされてる可能性が高いか。
古い文献なんか、物によっては高値で取引される。盗賊からすれば宝物と同じことだ。
(だいたい、古代文明期の資料だったら俺だって欲しいしな……)」
シュライ「それに荒廃の原因が異民族の紛争なら、異教の文書なんかは焚書だろう」
イズミ「よし、明日の方針はルトラさんに従う。皆もそれで構わないな。
調査には二、三日かかるんだろう?今日のところは早めに休んで、明日に備えよう」

その夜のこと。
見張りをしていたキャリーの耳に、唸り声のような音が聞こえた。

キャリー「こっちから……微かだけど、風の音に混じって何かの音が聞こえる。
みんなも起こした方がいいかな……ううん、まず何の音なのか確認しなきゃ」

音のする方へ歩いていくと、なにかを踏みつける感覚があった。



キャリー「誰かがわざとやった、ってことぐらいしかわからないな。
ネズミや、こうもり、ゴキブリ……小さい生き物なら見境なく串刺しになってるみたい」

それも1つではない、おびただしい量の死骸が串刺しになっている。
まだ新しいものは血が乾ききっていない。
こういうことをする誰かが近くにいる、ということだろう。
誰の仕業なのか気にかかるが、今すぐに危険が迫っているというわけでもなさそうだ。
キャリーは調査をやめて野営地へと戻った。


それきり何も起きないまま夜が明けた。
一行は昨夜の打ち合わせ通り、全体の調査を開始したのだが――



イズミ「左翼塔の損傷は激しそうだ、とは聞いていたが……。ここまでとはな。
調査は当然だが、ガレキ撤去も難しそうだ」
ルトラ「ここはそのままにしておきましょう。皆さんは右翼塔の調査に専念してください」
キャリー「じゃあ、いったん中庭まで戻ろうか。
……どうしたの、ウォルト?なにか見つけた?」
ウォルト「大したことじゃないんだが、今この辺から音がしたんだ。少し調べてみる」
メロ「……ただの亀裂ですよ。風が抜けるときに音がしたのではないですか?」
ウォルト「よく見てみろ。ここだけ雪が積もってない。
誰かがここを行き来してたんじゃないかと思う」
メロ「小さい動物か、小型の亜人種か……人間の子供でも通れそうですね」
ウォルト「獣の気配というか、それらしい形跡はない。
かといって人間がここまで来るとは思えないが……。今わかるのはこれぐらいだな」


ほとんど損壊していた左翼塔に対して、右翼塔の保存状態は想像以上に良かった。

ルトラ「さて、まずは私たちが入れる入口を探さないといけませんね」
ウォルト「じゃあ俺が軽く一回りしてくるから、お前たちはここで待機しててくれ。
くれぐれも、勝手に動いたりするなよ?」
アッシュ「わかってるからさっさと調べてこいよ」
ウォルト「お前なぁ、もうちょっと言い方ってもんがあるだろ」
キャリー「私も一緒に行こうか?」
ウォルト「お前は気を遣わなくていいんだよ。一人でも大丈夫だから大人しく待っててくれ」

ほどなくして通用口の跡を見つけだし、一行は修道院の中へと入った。
ルトラの提案に従い、まずは資料が残っていそうな部屋を探しことにした。



シュライ「……一通り見て回ったが、まだ見ていないのはここだけか。
いかにも何かありそうな部屋だな。皆、準備はいいか?」
イズミ「もちろんだ。しかし、ここまで何もなかったんだ。そう身構える必要もあるまい」
アッシュ「(そういう油断が一番危ねえってのに、何のんきなこと言ってやがる)」

部屋に足を踏み入れると、突然何者かがルトラと一行に襲い掛かった!



アッシュ「だから言ったんだあの馬鹿リーダーが!全部てめぇの責任だぞ!」
イズミ「何の気配も感じなかったんだ!予測できるわけがないだろう!?」
キャリー「2人とも、喧嘩してる場合じゃないでしょ!まずはあれを何とかしないと!」



アッシュの一撃が敵を捉えると、影は松明を叩き落として逃げ去った。
幸いにも冒険者は大して怪我を負わずにすんだが、
真っ先に狙われたルトラはショックで気を失ってしまったようだ。

キャリー「怪我の具合は大したことなさそうけど、とにかく手当てしておくね」
アッシュ「こいつの意識が戻るまで調査は始められねえな。つくづくめんどくせぇ奴だ」
イズミ「彼女はただの一般人だ。文句を言うな。……それよりも、これからどうする?
私はさっきの奴に襲われても対応しやすい中庭まで早く戻るべきだと思うんだが」
シュライ「確かに、ここにいるのは危険かもしれない。
さっきの奴は明らかにこの遺跡の闇を知り尽くしていた。ここで戦うのは下策だ」
イズミ「あの影はなんだったんだ?シュライ、想像はつかないか?」
シュライ「正直なところ、想像もつかない。サルにしては動きが洗練されていたし、
ゴブリンやコボルドにあれだけの動きが出来るとは考えられない」
キャリー「あのローブだけど、教会の絵で似たようなのを見たことあるよ。
あれは確か、大昔の修道士を描いたものだったはず」
イズミ「修道士の亡霊とかな」
ウォルト「(確かに、生体反応がほとんどなかった。気配も感じ取りにくかったし……)
……けど、実体があったからちょっと違うんじゃないか?」
メロ「それに、霊体であればまずマスターが気づくでしょう」

話し合っていても結論は出ず、一行はひとまず安全そうな中庭へと移動した。




ウォルト「ちょっと待った。
……誰かが、この拠点を調べた形跡がある。俺達が探索をしている間にだ」
キャリー「本当に?」
ウォルト「ああ、間違いない。痕跡はある程度は消しているみたいだが、気配までは消せなかったようだな」
アッシュ「厄介な問題がひとつ増えちまったか。ただの護衛だけで終わると思ってたんだが――」
イズミ「――そこか」

不意にイズミが片手で仲間を制し、ある一点を睨み付ける。

イズミ「こそこそ隠れていないで出てきたらどうだ?そこにいるのは分かっているんだ」




男はセワードと名乗り、エイブラハム家に雇われたリスクブレイカーだと告げた。
エイブラハム家の名を聞いたシュライの顔がにわかに険しくなる。

シュライ「エイブラハム家……つまりは、そういうことか。
どうりで、教会からの依頼にしては内密に進められていたわけだ」
「どういうこと?分かるように説明して」
シュライ「エイブラハム家は、西方諸国でも有数の名家だ。……裏では悪い噂が絶えないが。
そしてリスクブレイカーは文字通り依頼人のリスクを軽減する、裏工作専門の冒険者みたいなものだ」
イズミ「有力貴族と、それに雇われたリスクブレイカーか……。何が目的だ?」

セワードは思いのほかあっさりと自分と雇い主の目的を明かした。
――エイブラハム家の目的は、この荘園一帯の土地を手に入れること。
この近辺では最近盗賊狩りと整地が行われており、近く交易路が拓かれる。
つまり周辺に土地を持ち、宿場町を設ければ一挙に儲けるチャンスとなる。
そこで目を付けられたのが、教会とこの修道院の関係だった。

この修道院と周辺の荘園は、かつて攻め込んできた異民族に接収されたことがある。
その後の戦乱でエイブラハム家が力づくで領土を取り戻したが、
権利証は戦時中の混乱のうちに失われてしまった。
時は現代になり、その話を聞きつけたセワードの雇い主が権利証を捏造した。

一方で、当時の領主はグリグオリグに救われた過去を持っていた。
領主は彼のために領地に修道院を立て、
さらには聖北教会に宛てて次のような遺言状をしたためていた。



イズミ「つまり、こいつの雇い主が余計なことをしたために権利証が二つ出来てしまったと」
アッシュ「教会も姑息な手を使いやがる。あいつらの目的はこの土地そのものであって、
修道院の調査自体はお飾りでしかねえってことだろ」




イズミ「……で、お前の提案というのはいったい何だ?我々に一体何をしろというんだ?」
セワード「あんた達には、ズバリ、何もしないでいてもらいたいのさ。
何もせずにいてくれるってんなら、そうだな……
銀貨に換算して2000sp相当の宝石を用意しよう」
イズミ「何もしない……?
この場で依頼を放棄して、ルトラさんを見捨てて帰れ、ということか」

イズミ「条件を見れば悪い話ではないが、皆はどう思う?」
キャリー「私は反対だな。ここでルトラさんを見捨てちゃうのは可哀そうだよ」
メロ「同意見です。一度受けた依頼を放棄して別な提案に安易に乗り換えるのは、
信用問題にかかわるかと」
シュライ「俺は賛成だ。メロの意見にも一理あるが、我が身を守るのも冒険者として重要なことだ。
彼の提案を蹴れば敵を増やすことになる」
アッシュ「俺も。こんな好条件をみすみす逃す手はねえだろ。
それに、これ以上教会と馬鹿な箱入りの手助けをするのはごめんだ」
イズミ「なるほどな……。ウォルトはどうだ?」
ウォルト「俺は貴族にも教会にも思い入れはないし、メロとシュライの言い分もわかる。
……だから、はっきりどっちとは言えないな。イズミの判断に従うよ」

イズミ「私も、教会と貴族のどちら側にも味方するつもりはない。
ただ、一人の冒険者として受けた依頼は最後までやり遂げる。
それが私の名誉を守ることに繋がるのならば、目先の損得など惜しいものか」
セワード「……なるほどな。確かに、あんたたちの考えることはよくわからねぇ。
だがまぁ、あんた達がそれを選んじまったんだから仕方ないな」



次に会うときは敵同士だ、と言い残してセワードは去っていった。

ウォルト「お前、悪い条件じゃないって言いながら最初っから断る気だったろ?」
イズミ「そんなことはない。仲間の意見を尊重するのもリーダーとしての役目だ。
彼の提案を呑んで我が名誉を失わない道があるならば、当然そちらを取るつもりだった」
ウォルト「まあ、そこはメロにきっぱり言われてたな。依頼の放棄は信用問題にかかわるって」
イズミ「それにだな。アッシュと同じ選択をするのは気に食わん」
ウォルト「そんな理由で断ったのか!?」


3に続きます。
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