一次創作、時々版権ネタ。
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推奨レベル2~4
戦乱により破棄された修道院がこの度教会の史跡局により発見されました。
つきましては冒険者の皆様方に、この修道院跡を調査し、
損傷の度合いを報告いただく仕事を依頼したく思っております。
(張り紙より抜粋)
一部シーンの伏字は元から入ってます。
ネタバレ・スクショ大量につきご注意ください。
戦乱により破棄された修道院がこの度教会の史跡局により発見されました。
つきましては冒険者の皆様方に、この修道院跡を調査し、
損傷の度合いを報告いただく仕事を依頼したく思っております。
(張り紙より抜粋)
一部シーンの伏字は元から入ってます。
ネタバレ・スクショ大量につきご注意ください。
依頼人は、聖北教会史跡局の女性。名前をルトラ・マッカレルと言った。
内容はアレンケ村で最近見つかった修道院跡の調査と、道中の護衛。
史跡局は教会の歴史研究と史料編纂、遺跡の発掘を行う部署だ。
冒険者達は宿の親父の策略に乗せられて彼女の依頼を請け負う羽目になり、
今こうして依頼人の話を聞いている。
ルトラ「ですが、神智認定局の方からは、今回の調査の結果次第では
この『グリグオリグ』なる人物の列聖も考えるという旨を伝えられております」
イズミ「……『列聖』?」
キャリー「『聖人として認められる』ことを、
『聖人に列せられる』という意味から『列聖』と呼ぶんだよ」
メロ「お詳しいのですね」
キャリー「うん、リューンに来る前はずっと教会にいたから。なんとなくわかるよ。
ところでルトラさん。その『グリグオリグ』っていう人の名前は聞いたことがないんだけど……
あ、私が知らないだけならごめんなさい!でも、列聖されるようなすごい人なの?」
ルトラ「現存する資料だけでは、彼――と一応仮定しておきますが――を聖人とするには不足です。
ですが、認定局はずいぶん熱心に彼を聖人に列する働きを見せています」
史跡局の『聖遺物収集課』によれば、
書庫でグリグオリグの名を一度目にしたことがあるという。
左腕が発見された当時も、『グリグオリグ』と『左腕』の真偽について大論争が巻き起こった。
しかし五十年ほど前に火事が起き、左腕も当時の資料も全て失われてしまっている。
ウォルト「……ところで、ヴァンピールってなんだ?」
メロ「そこからですか。吸血鬼の事ですよ。ヴァンパイア、の古い呼び名です」
イズミ「つまり吸血鬼退治が真実だと証明すれば、そのぐりぐりナントカとやらが列聖されるわけか。
で、どうすればそれは明らかになるのだ?」
ルトラ「う~ん……資料が残っている可能性は低いんですよね……。
なにせ、もう破棄されてから百年近くたっているわけですから。
それとイズミさん…… ぐりぐりナントカじゃなくてグリグオリグです」
シュライ「俺からも質問。今現在、その村の一帯は誰に支配権があるんだ?
修道院ってことは、そのぐりぐりナントカって修道士が荘園を切り盛りしてたということだろう?」
ルトラ「所有権自体は教皇庁にあるのですが、その件についてはちょっと難しい問題が発生しているんですよ……
まぁ皆さんにはそれほど関係のないことだと思いますので、この件はこれでオシマイということで……」
シュライ「(関係ないことはないと思うんだが。その部分には関わるな、ということか?
あるいは、何らかの事情で口止めされているか)」
ルトラ「それとシュライさん…… ぐりぐりナントカじゃなくてグリグオリグです」
シュライ「……さて、どうする?修道院の所有権は教皇庁にあるが、
それを公言できないイザコザが別の誰かとの間に存在している。
利権問題ということを考えると、有力貴族というのが一番妥当な線だ」
イズミ「それでは、最悪我々には有力貴族を敵に回すリスクがある、ということか?」
シュライ「最悪の場合はな」
アッシュ「わざわざ教会なんぞに味方して、貴族様に喧嘩売るってのか。何の得にもならねぇな」
メロ「アッシュ、気持ちは分かりますが依頼人の前では控えてください。
もしイズミがこの依頼は信用できないと判断するなら、この依頼は断った方がいいでしょう」
イズミ「その程度で怯む私と思うか? ルトラさん、そなたを信用しよう」
リューン出発より三日。
二日を馬車で、一日を歩きとおして一行はアレンケ村へとたどり着いた。
村長の家に宿を借り、一夜を過ごした四日目の朝。
イズミ「面倒をかけてしまってすまないな」
村長「いえ、お気になさらず。
差し支えなければ、皆様の旅の理由などをお聞かせ願えませんでしょうか?」
イズミ「ああ。実は我々は……」
イズミが話し始めたとき、村長夫人があわただしく入ってきた。
何やら耳打ちすると、村長の顔色がさっと変わる。
村長「皆様。誠に申し訳ありませんが、少々この場にて、お待ちいただけませんでしょうか?
少々その……込み入った事情が……」
イズミ「いや、まあそれは構わんが。いったい何があったのだ?」
村長「いえ、それは……。皆様にお話しするようなことではございません。この村の事情です」
そう言い残して、村長は夫人と一緒に外に出ていってしまった。
イズミ「端切れが悪いな。どう思う、シュライ?」
シュライ「確かにあの豹変ぶり、何か隠している風ではある……。
とはいっても、よそ者の俺達に踏み込める事情ではないだろう」
キャリー「何が起きたのかは気になるけど、きっと村長さんなりの考えがあってのことだもんね。
しばらくは大人しく待たせてもらおうか」
ウォルト「……なあメロ、」
メロ「『盲目』を意味するスラングです。お世辞にも上品な言葉とは言いかねます」
ウォルト「なるほどな。まあ、あの顔からしてヤバい意味だろうなって見当はついてたけど」
そこでルトラが起きてきたため詮索を切り上げた。
村の事情に踏み込むとろくなことがないということは、経験上分かっている。
村長が戻ってくるか、あるいはルトラの出発の準備が整うまでもうしばらく待つことにした。
ルトラ「それにしても寒いですね……
たった三日歩いただけなのに、リューンとはこんなに気候が違うんですね。
私、リューンから出たことがほとんどないんですよ」
アッシュ「そんな『箱入り』がよく一人でこんな任務を命令されたな」
ルトラ「今回の調査はただの下調べで、私が帰ってからその調査報告をもとに
大々的に教皇庁から人員が派遣される手筈になっているんです。
でも正直、どうしてこんな任務に私が選ばれたのか理解できないんですよね」
イズミ「実はキーレ送りだったりしてな。だとしたら同情するよ」
キャリー「ちょっと、イズミ!冗談でも怖いこと言わないでよ!
きっと、ルトラさんなら大丈夫だって信用してくれたんだよ」
メロ「その安易な考えはどうかと思います。正確には、箱入りでも楽にこなせる仕事なのでしょう」
イズミ「(だが冒険者を雇うってことは、危険が伴う可能性があるということだよな?)」
シュライ「(おそらくな。件の貴族が妨害してくることを警戒しているんだろう)」
他愛のない雑談をかわしながら準備を整え、村長の家を後にした。
ルトラの案内で村はずれまで来ると、女の子が一人で歩いているのに遭遇した。
アッシュが声をかけると、まるで声の主を探すようにあたりを見回した。
ルトラ「この子……目が、見えてないんですね……」
イズミ「どうして吹きさらしに一人で?」
アッシュ「ここだ、こっち。キャリー、手を貸せ」
アッシュがキャリーの手を掴んで女の子に触れると、やっとこちらの居場所が掴めたようだ。
キャリー「こんなところで何してるの?お父さんやお母さんは?」
女の子「ともだちに……あいにいってたの。
わたしのともだち、ちょっとだけしか、あってくれないから……
わたし、おとうさんもおかあさんもいないから……」
イズミ「(盲目の孤児、か……)」
シュライ「なぁ、ひょっとして、この子がそうなんじゃないか?例の、村長が言ってた」
イズミ「つまり、孤児だから村長夫妻に育てられている、ということか」
シュライ「自分たちと血の繋がりのない、しかも目が見えない他人の子供。
村長のあの態度も、理解できなくはない。この『家出』も常習という感じだ」
一行が女の子を前に相談している間に、村長夫妻がこちらへやってきた。
こちらには気づいていないのか、メアリと呼んだ女の子の頬を叩き酷く叱咤している。
その姿からは、冒険者たちを出迎えた時の穏やかさは消えうせていた。
だがメアリを怒鳴りつける夫妻からは、なにかに怯えているような雰囲気も感じられた。
イズミ「まだ幼い子になんてことを……!」
シュライ「イズミ、あまり深入りするなと言ったはずだ。ここは大人しく引き下がろう」
イズミ「わかっている。ここがリューンであればひと思いに斬り捨ててやるものを……!」
メロ「仮にリューンであっても斬るのはやめてください」
ウォルト「あのー、村長さん達。俺達、準備ができたからそろそろ行こうかと思ってるんだ」
イズミ「短い間ではあったが、世話になった。……それじゃあルトラさん、案内を頼む」
村長「おや、皆様。そちら側は違いますよ。中央行路へは村の東側からでないと辿り着きませんよ」
ルトラ「――ああ、いえ。こっちでいいんです。
私達、湖の向こう岸にある修道院跡に用事が――」
村長「なんですとっ!!」
シュライ「まずいな。修道院はこの村にとってタブーなのかもしれない」
イズミ「どういうことだ、シュライ?」
シュライ「理由は分からないが、今の反応――あれはタダゴトじゃないだろう。
信仰か畏怖。タタリを恐れてるとみるのが正解かな」
イズミ「タタリ?しかしどんな事情があるにしても、修道院にはいかなければならないんだ」
シュライ「なら、村人は確実に俺達の敵に回ると見ておいた方がいい。
せめて余計なことは言わないよう依頼人に……いや、遅かったか」
修道院の調査、と言いかけたとたん雪玉をぶつけられた。
村長「あの修道院は呪われておるんじゃ。あんたらが調査などしようものなら、
その呪いで今度こそワシらは村を捨てねばらならんようになってしまう」
ルトラ「……我々を拒むということは村長、
すなわち聖北教会そのものを拒否する、ということと同義になりますよ」
アッシュ「(こればっかりは村の奴らに同意だ)」
シュライ「(呪いか……。本当の話ならば興味があるな)」
メロ「マスター、それにアッシュも。決して依頼人や村人の前では本音を明かさないでください」
イズミ「阿呆共はともかく、ここで依頼を放棄するわけにもいくまい。
ここまでの働きが無駄になってしまうし、我々の信用問題もある」
怒りに震えるルトラを連れ、一行は修道院に向かって歩き出した。
2に続きます。
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