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一次創作、時々版権ネタ。
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推奨レベル1~3

とある依頼の帰り道。ヒバリという村に立ち寄りました。
それはただ宿で一泊するだけのため。
安くて美味しい夕食を取り、
重くなったお腹を暖かいベッドが迎え入れてくれました。
明後日にはリューンに帰れます。
ゆっくり眠って、報酬の使い道を夢見ましょう。

(張り紙より抜粋)

寝る前さくっとパックにも収録されてる有名なシナリオ。
なんで今更と言われると辛いけど、大好きなのでどうしてもリプレイが書きたかった。
ネタバレ、スクショ多数につきご注意ください。



月夜の晩、冒険者たちは扉をたたくを音で目を覚ました。
窓から見える寒村はヒバリ村という場所だ。
冒険者たちはある依頼の帰り道、この宿に泊まることを決めた。

イノ「こんな時間に誰だ?」
?「この村の村長でございます。どうかこの扉を開けてくれませんか?」
プライツ「きっと何かあったのですよ。エルカナ、開けてあげてください」
エルカナ「なんで俺が……。わかったよ、ちょっと待ってろ」

扉を開けると、年老いた男と若い女性が部屋に入ってきた。
女性の目元はこの暗がりでもわかるほど赤くはれていた。
依頼かと尋ねると老人はゆっくりとうなずいた。



一刻ほど前のこと。村の子供が1人、妖魔にさらわれた。
話からして、妖魔はおそらくゴブリンだろう。既に10匹を越える数がいるという。
1月前から村はずれの廃坑に住み着き、たびたび悪さをしていたらしい。
警戒を怠っていたせいでこんな事態を招いてしまったと自分を責めた。

ダリウス「見たところ貧しそうな村だ。自警団の類はなし、冒険者を雇う金もなかったんだろう」
エルカナ「過ぎたことを悔やんでも仕方ない。それより、子供の特徴を教えてくれ」
村長「9歳になる女の子です。名はマリアと言います。
髪は長い金色で、いつも母に編んでもらった黒と赤のフードを被っていました」
スズリ「黒と赤のフードか。もし妖魔に取られずにいたなら、良い目印になりそうだね」
ヴァローナ「夜の依頼、相手はゴブリンとはいえ多数じゃ。報酬もさして期待できんぞ。どうするんじゃ?」
エルカナ「そうはいっても、他にやれる奴がいねえんじゃ仕方ねえだろ。
この依頼を受けよう。廃坑ってとこの近くまで案内を頼めるか?」



村長「この道をしばらく進めば、その古い炭鉱があります」
エルカナ「ゴブリンは子供をそこに連れ去ったと。後は俺達に任せてくれ」
村長「最後に一つ、言っておかねばならぬことがあります。
実はあなた方に頼む前に、村の者がこの廃坑に向かいました。さらわれた子の父親です。
それが一刻も前の事です。……おそらくは、もう」
プライツ「(これ以上犠牲者を増やすわけにはいきませんね……。何としてでも子供は連れ帰らないと)」



プライツ「……はい?」
村長「村の者は皆、あの子を愛しております。それを理不尽に失えば、冷静ではいられません。
その感情は奪った妖魔より先に、あなた方に向かうかもしれません」
イノ「ああ、確実に向かうだろうな。
非情な現実を受け入れられずに、全力を尽くした俺達を容赦なく責め立てるだろうさ」
村長「……ですから、これは先にお渡ししておきます」



エルカナ「俺達が頼まれた仕事は、子供を救い出すことだ。お金は、その子を村に帰してからだ。
依頼を達成しないまま報酬だけもらって逃げるにはいかない」
村長「……わかりました。これをお渡しできることを、私も願っております」

ダリウス「……なあエル。かっこつけてるとこ悪いけど、お前大丈夫か?」
エルカナ「かっこつけてなんかねえよ。冒険者として当然の事だろ。
獣化の事なら心配すんな。炭鉱の中なら月の光も当たらない。まだ抑えられるはずだ」
ダリウス「もし僕のことを襲ったらその場で斬るからな」
エルカナ「てめえならマジでやりそうだな」




廃坑の入り口に見張りはいない。一行は慎重に中へと足を踏み入れた。

イノ「そういえば、この廃坑がどのぐらいの広さなのか聞きそびれたな」
ヴァローナ「10匹以上のゴブリンが住んどるんじゃ。そこいらの洞窟とは違うじゃろうな。
よいな、先頭は頼んだぞ」
イノ「言われなくとも。 さて、こっちの方は……」
スズリ「痛っ!?ちょっと、急に止まらないでよ!」




どれもひどく損壊しており、大量の出血をしている。
生きている個体はもちろん、原型を留めているものさえ一体もない。
一番良いもので足が一本。一番ひどいもので両手両足、そして頭部が完全につぶれている。

イノ「どうやら、元はゴブリン共の食糧庫だったらしいな。真新しい穀物の袋が積んである。
ヒバリ村から盗んできたものか?もっとも、今となってはどれも血だらけだが」
プライツ「……食べ物……」
エルカナ「おいプライツ、あからさまに落ちこむな」
プライツ「……でも、綺麗に洗えば何とか」
エルカナ「持ち帰ろうとすんな!」

ヴァローナ「しかしここまでの所業、とても人間業とは思えん」
イノ「だろうな。腕の立つ冒険者でもこうはいかないだろう」
ヴァローナ「ということはじゃ。
ゴブリンを殺したのは子供の父親とやらではなく、何か別の要因かもしれん」
イノ「なにかの事故が起きたか、強大な生物か。……いや、結論を出すにはまだ早いな」


一行は探索を進めていく。



イノ「右腕以外に目立った傷はない。
血の跡からして、北の通路で腕を落とされてここまで逃げてきた……ってところか」
ダリウス「なあ。やっぱり、こいつがさらわれた子供の父親だよな」
イノ「おそらくな。大事な娘をさらわれて、
無謀と分かっていても乗り込まざるを得なかったんだろうよ」



プライツ「彼の形見になってしまいましたね。依頼が終わったら、あの母親に届けましょう」
ダリウス「お前って変なところで欲がないよな。……まあ、別にいいか」


見開いたままになっていた男性の目を閉じると、イノは立ち上がった。

イノ「さ、依頼を続けよう」
スズリ「イノも意外と良いところあるんだね」
イノ「意外は余計だ」




イノ「落石か?いや、天井にそんな跡はないな。どこかから転がってきたんだろうか」
プライツ「なにか、規則的なの模様が彫ってありますね。もしかしたらゴブリンの文字じゃないですか?」
エルカナ「ゴブリンって文字を書くのか?」
ヴァローナ「仮にそうだとしても、卓越した技術がないと読み解けんぞ」
スズリ「ふふん、ここは私の出番みたいだね!解読の魔法は得意なんだよ!」
イノ「随分と自信満々だな。それじゃ、お手並み拝見と行こうか?」
プライツ「(……というか、解読の魔法が無いと本が読めないんですよね。目が見えないから)」



スズリ「ゴブリンの日記かな。文章にしては文字が不規則で読みづらいよ」
ダリウス「仲間と喧嘩しただの、ネズミを飼い始めただの、大したことは書いてないな」
ヴァローナ「いや、『あいつが森に現れたせいで忙しいのにごはんが少ない』ともあったぞ。
最近になって何か別の妖魔が現れて、ここいら一帯を荒らしたのかもしれん」
エルカナ「それでゴブリンが人里を襲ったと?確かに辻褄が合ってるような気はするが」
イノ「だとすれば、ゴブリンとさっきの父親も殺したのも『別の妖魔』の仕業か」
ヴァローナ「(問題は、その妖魔が今どこにいるのかということじゃ。
父親が廃坑に向かったのが一刻ほど前、殺されてからさほど時間は経っておらん)」


扉を開けると3匹のゴブリンと鉢合わせてしまった。
襲いかかってきたゴブリンを難なく撃退し、部屋の調査を再開する。

イノ「ここも食料庫みたいだな。奥まったところにある分、貴重なものを保管してるんだろう」
プライツ「……!ここならなにか食べられるものがありますかね?」
エルカナ「だから期待すんなって」
プライツ「何かおいしそうなもの……あっ」



プライツ「壺の中に、女の子がいました!」
スズリ「何ですって!?さらわれた子?無事なの?」
プライツ「怪我の度合いは分かりませんが、ちゃんと生きてます」
エルカナ「もう大丈夫だ。村長と、あんたの母親に頼まれて助けに来たんだ」

一行は協力して女の子を壺から助け出した。
精神的なショックを受けていたようだが、幸い目立った傷はない。
女の子を隊列の真ん中に入れ、廃坑の出口へと歩みを進める。




イノ「外から光がさしてる。もうすぐ夜が明けるな」
スズリ「もうそんな時間なんだ。早くこの子を村に帰して、私達も休もう」

外に出ようとした時、光の中に影が差したかと思うと2匹のゴブリンが現れた。
驚いた女の子が隊列の真ん中でしりもちをつく。

プライツ「……!これでは逃げられません!」
エルカナ「仕方ねえ、これで最後だ!皆行くぞ!」





ゴブリンを木っ端微塵に粉砕し、洞窟の外から現れたのは
身の丈5メートルあろうかという巨人――トロールだった。

ヴァローナ「こやつが廃坑を荒らしておった犯人か!」
スズリ「そんなこと言ってる場合!?こんなやつに勝てるわけないよ!早く逃げなきゃ……!」
イノ「だが子供はどうするんだ!?動ける状況じゃないぞ!」
エルカナ「なら担げばいい!それだけだ! ほらこっちだ、しっかり掴まってろ!」

言うが早いか、エルカナが子供を抱き上げて走り出す。
他のメンバーも一斉に駆け出した。



スズリ「まだ追ってきてるよ!」
イノ「心配するな、あいつを撒きながら出口を目指す!俺が先導するからついてこいよ!」
ダリウス「お前が言うと余計に心配だ!」

プライツ「エルカナ、大丈夫ですか?遅れてますよ?」
エルカナ「な、何とかな……てめえは他人より自分の心配してろ」

洞窟を一周し、冒険者たちは再び出口にたどり着いた。
これで外に出られる!


エルカナが喘ぎながら叫ぶ。
ここまで子供を背負って走ってきたのだ。体力は限界に近い。

プライツ「だから言ったのに……」
ダリウス「……!エル、走れ!後ろ!」




炭鉱から飛んできた石がエルカナに直撃する。
エルカナは最後に仲間たちの方に手を伸ばし――空を掴むと、目を閉じた。



子供が草むらの中で泣き叫ぶ。エルカナが岩を見るや、放り投げていたのだ。

ヴァローナ「(子供は無事か。……じゃが、このままでは同じこと)」

大地を踏み鳴らし、トロールが洞窟から現れる。
鼻息を荒げ、悠々と周囲を見渡し――
泣き叫ぶ子供と倒れたエルカナに向け、足を一歩踏み出した。

イノ「……ああもう!化け物め、こっちだ!」
スズリ「そうよ、こっちだよ!」

冒険者たちは怯えながらも、しかし毅然と叫び
トロールの注意を自分たちに向けた。



イノ「ったく、不出来な弟を持つと大変だな」
ダリウス「だな。なんでこんな化け物を相手しないといけないんだか」




ダリウス「間違いない。さっきから少しずつ動きが鈍ってきてる」
スズリ「ひょっとして、こいつら日の光が苦手なのかも」
イノ「太陽は邪を払う力ってか。なら、倒せない相手じゃない!」



スズリ「(あと少し……だけど、耐えられるのかな……)」

その時、周囲に陽の光がさした。
夜が終わり、太陽が空に昇る。
しかるべき時間が来れば、毎日起きていること。……それがこんなにも有難いとは。



トロールは、天に向けた姿勢で石化している。
断末魔を固めた石像だ。

イノ「……皆、生きてるか?」
スズリ「し、死ぬかと思った……」
ダリウス「……、エルは!?」




日も高く上がるころ、冒険者たちは扉をたたくを音で目を覚ました。
窓から見える寒村はヒバリ村という場所だ。
冒険者たちはある依頼の帰り道、この宿に泊まることを決めた。

村長「お休みのところ、失礼とは思いましたが……。約束していた出立の時間になりましたので」
プライツ「えっ、本当ですか? ……うわ、日が高いですね」
イノ「まずいぞ、急がないと次の宿場にたどり着けなくなる」

一行は慌てて旅立ちの支度をすると、村長にお礼を告げて宿を出た。



炭鉱の入り口に着いた。
天に吠えて固まるトロールの石像が鎮座している。

ダリウス「きっと、著名な彫刻家が長い時間をかけて造ったに違いない。
しかし何の意図があってこんな物を。それも、こんな辺鄙な田舎に」
イノ「なにかの比喩じゃないか?
黒死病への勝鬨。魔女裁判への嘆き。……あるいは、繰り返される戦争への怒り」



エルカナ「よく場所が分かったな」
ヴァローナ「村長殿に聞いたんじゃ。おぬしこそ、ここで何をしておった?」
エルカナ「こいつを一目見ておきたかったんだ。
俺はこいつの死にざまを見てねえ。こうして止まった姿を見ておかないと納得できねえな、って」

ダリウス「死に損なったな、エル。皆でこんなに立派な墓石を作ってやったのに」
エルカナ「力作なのは認めるが、これはちょっと悪趣味だ。
もっと質素なのだったら、大人しく死んでやったんだがな」
スズリ「そうだね。冒険者の墓なんて、剣1本あれば十分でしょ」
エルカナ「犬死は遠慮したいが、讃えられて死ぬ気もないな」
プライツ「でも犬ですよね」
エルカナ「犬じゃねえ、俺は狼だ!……いや、まず人間だ!」
ヴァローナ「ほれほれ、漫才はその辺にしてそろそろ行くぞ。次の宿場に間に合わなくなる」



後日談。

プライツ「……それにしても、よくあんなことを言えましたね」
イノ「ん? ああ、さっきのダリエルとスズリな」
プライツ「スズリったら、エルカナの無事が分かった時に泣いてましたのに」
イノ「ダリウスも、トロールを倒した後すぐに飛んで行ったよな。さっすがお兄ちゃん、ってか」
プライツ「無事でよかったといえばいいのに。2人とも素直じゃないですね」
エルカナ「……へえ、あいつらがねえ」
イノ「なんだ、いたのか。盗み聞きとはいい趣味だな」
エルカナ「嫌な言い方すんなよ。たまたま聞こえたんだ」
プライツ「ちょうどよかったです。あなたに聞きたいことがあったのですよ。
2人はダリウスがお兄さんなのですか?」
エルカナ「ああ、言ってなかったか?俺が弟で、ダルが兄貴だ。
まあ双子なんだからどっちも一緒だけどな」
イノ「ダリウスはすごく気にしてたぞ。僕が上なのにリーダーじゃないのはおかしい、とか」



とりあえず言い訳。
・3代目2期ではなくこっちのリプレイを先に書いた理由:終盤のシーンをエルカナにやらせたかった
・エルカナとダリウスは互いを愛称で呼んでます が、ダル呼びは後日談にしか入れられなかった
・スズリが解読スキルを持っているのは戯書の設定から来てます なおスキルは自作
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