一次創作、時々版権ネタ。
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推奨レベル5~7
かつて砂漠に逃げた移民の調査を進めるシナリオ。
大好きなシナリオで、新しいパーティを作るたびにやってます。
あんまりにも好きだから私ごときがリプレイを書くなんて!という思いもありましたが、
やりたいネタがいくつかあったので挑戦しました。
ネタバレ、スクショ大量につき注意。
かつて砂漠に逃げた移民の調査を進めるシナリオ。
大好きなシナリオで、新しいパーティを作るたびにやってます。
あんまりにも好きだから私ごときがリプレイを書くなんて!という思いもありましたが、
やりたいネタがいくつかあったので挑戦しました。
ネタバレ、スクショ大量につき注意。
ある旅の宿、老婆は騎士に言った。西の村にはいかない方がいい、と。
そうして、あの村で起きたある騒動を話して聞かせた。
森の傍らのとある家に、美しい娘が住んでいた。
肌はあやめのごとき黒、髪はなお黒。
虫や獣に語りかけ、友さながらとする、
いささか風変りではあるが心根の優しい娘であった。
求婚する男は後を絶たず、娘はやがてそのうちの一人に嫁いだ。
だが、三年(みとせ)過ぎても若い二人が赤子の産声を聞くことはなかった。
娘は石女(うまずめ)であったのだ。
それに気づくや男は怒りに駆られ、うつむく娘を殴打した。
のみならず、夜が凍えた息を吹きかけ、人ならぬものがうろつく森に放り出した。
森に放り込まれた娘が、ふたたび男の前に姿を現したは、
七夜を数えたのちのこと。
青ざめた顔は死人差ながら、口をきくこともあたわず、そして身ごもっていた。
石女のはずではなかったか?
幾日も経たずに娘は死んだ。村人たちは娘の死体を取り囲み、囁きかわした。
たった七夜の間に、臨月の女と同じほど、腹が膨れている。
水も食料も持たぬ身で、荒れた森で生き延びた。
腹の中の子供は、人の子供でるはずがない。
では、何の?
「娘の腹を裂くと、赤子は生きていた。
母親に譲られた肌を持ち、母に譲られたとは思えぬ黄色い瞳で村人を見返した。
……つい最近の話さ。赤子は村人によって殺されたか、もしくは恐れられ捨てられたか……。
往々にして、辺境には我々の予想だにしないものが待ち構えているもんじゃ」
依頼人は、賢者の塔に籍を置く学者だった。
話すたびに肩をすくめるしぐさが、人を食ったような不快さを感じさせる男だ。
アイリーンが書を受け取り、頁をめくろうとすると、学者のやや高い声が水を差した。
「共通語の読み書きも難しい冒険者の方に冒険者の方に読ませようなどとは、
いやはや失礼しました。
私が代わりにお読みしましょう。翻訳に使ったメモがあればすぐですから。
――さて、メモはどこだったか?」
カライス「『聖北国教会歴二十六年赤の月、
トラキア西の未踏の砂漠地帯へ移民の集団が旅立った。
彼らは聖北教会による弾圧によって居場所を失い、
砂漠へ一縷の希望を持って旅立ったとされる。
その後の消息は一切不明……。』
移民の話は初めて聞きました。これは信頼に値する書ですか?」
――今回の依頼は、聖北教会の弾圧を逃れて
森から砂漠に移民した人々の調査。
情報源は確かだが、既にその地は途絶えていると見て間違いはない。
そこで、人が住んでいたという何らかの痕跡を見つけることが主になるだろう。
カライス「教会歴二十六年というと、
聖北による他教や異民族への弾圧がことさら激しかった時期ですね。
教会歴五十年の焚書事件を逃れた貴重な本のいくつかに、
水責めだの火刑だの、ひどい弾圧の様子が記されています。……」
エリーゼ「……何よ。これだから聖北は信頼できない、みたいな目は」
カライス「おや、よく分かりましたね。そこまで顔に出てましたか」
フェリシャ「不毛の砂漠に移民するなんてと思ったけど、
そんなにひどい弾圧の歴史があるならおかしくないか……」
アイリーン「(情報の出所もはっきりしているみたいだし、
依頼人も信頼……はしたくないけど、怪しい奴じゃない)
わかりました。この依頼を受けます」
フェリシャ「それにしても、依頼人はいけ好かない男だったわ。
賢者の塔っていうのはあんなのばかりなのかしら?」
アイリーン「そうだよね!今時、共通語の読み書きができない冒険者なんてそうそういないよ」
エリーゼ「研究ばかりしていると、自分が偉いと勘違いするんでしょ。
よっぽど依頼を蹴ってやろうかと思った」
カライス「あんなのどこにでもいる人種です。彼の御高説なんか、全く聞いてませんでしたよ。
いちいち気にしてたら、身が持ちませんから。
それに、この砂漠に消えていった民族……。どうなったか、私にも興味があります」
方位磁針を頼りに西に進むうち、砂漠に夜の帳が降りる。
急激に冷え込み、冒険者たちは慌てて依頼人に借り受けた装備に着替えた。
ルーク「今日は何の収穫もなし、か。まだ初日だから仕方ないよね」
エリーゼ「ちょっと確認。
5日かけて成果がなかったら、いったん引き返して補給……ってことでいいのよね」
アイリーン「うん。最初はもう少し広範囲に探索する予定だったけど遭難しそう。
このまま西に進路を固定した方が良さそうだね」
セシル「はは、カライスの目の方がずっとキラキラしてやがる」
アイリーン「さすが占星術師ね。普段よく見えない星も、ここからなら見えるかもね」
他愛のない雑談を交わした後、一行は明日に備えてテントで休んだ。
迎えた2日目の朝。一行はある深刻なトラブルに見舞われた。
セシル「方位磁針が狂ったのか?こんなところで?嘘だろ……?」
エリーゼ「衝撃を与えたりはしてない。さっきの突風の時だって、しっかり守ってたわ。
方位磁針が悪くなったんじゃない。このあたりの地理的な要因じゃないかしら」
フェリシャ「何の道標もないまま歩いたら、すぐに方角を見失うわね。
目印が一切ないから、まっすぐ進んでいるつもりでもいつの間にか逸れてしまう」
セシル「下手に動けば迷って死ぬな。……どうする?」
カライス「……ちょっと待ってください。夜になって星が出れば、分かりますよ、方角。
明るいうちはさっぱりですけどね。星の位置を頼りにすれば、大丈夫だと思います」
ルーク「ということは、夜しか動けないか……」
アイリーン「……。星の読みは確かなの?」
カライス「ええ。ゆうべ星空を眺めてて、これを見ながらでも進めるなって思いましたよ」
アイリーン「だったら、このまま夜を待って星が出たら東に引き返そう。
不安材料を抱えたまま、奥地へ進むのは危険だよ。いったん戻って、出直した方がいい」
こうして一行は日が暮れるのを待ち、夜に行動することとなった。
カライスから星の読み方を教わりながら、一行は東に進路を変えて進軍を続ける。
ところが進んだところで、今度は奇妙な鳥の集団に襲われる。
ルーク「ただの鳥じゃないよ、次から次へと降ってくる!」
フェリシャ「どこかに身を隠せるところはないの?」
カライス「駄目です……、あの鳥には目がありません。
鳥のくせに嗅覚が発達しているようです。臭いでこっちを追っています」
アイリーン「逃げても無駄、ってことね。だったら奴らが怖気づくまで、叩き伏せるしかないか!」
フェリシャ「無茶言うわね…… あれ、ちょっと待って!鳥たちの様子が……!」
セシル「うわ、な、なんで砂漠のど真ん中に女が!?」
フェリシャ「何かしら、あのふわふわしてる動物!可愛い!」
エリーゼ「フェリシャ、気にするところはそこじゃないでしょう」
ルーク「セシルも怖がらなくていいから。見たところ、悪い人じゃなさそう……かな?」
アイリーン「ええと……あなたは?」
フェリシャ「へえ、あのふわふわした動物はヤタっていうんだ」
エリーゼ「それどころじゃないわよ。マニの民、ですって?付近に集落があるの?」
ルーク「それって、依頼の件の砂漠に旅立った移民の末裔……?」
カライス「おそらくそうでしょう。言葉がまずまず通じますから。
元が近しい民族と、文化圏を同じくしていたことに間違いないでしょう」
アイリーン「どうやらあなたのおかげで助かったみたい。ありがとう。
でも、なぜあなたみたいな女性が一人で、この死の砂漠に?」
タリア「……死の砂漠。貴方がたのような、タルナーグの物売りの間で、
ここはそのように言われているのですね」
アイリーン「タル……え?なんていったの?物売り?」
カライス「あ…… いえ、誰しもがそんな風に言ってるわけじゃないんです。
私達はタルナーグではちょっとした有名人で。
私たちの成功を妬んだ商人が、悪しざまに言ったことが耳に残っていて。すみませんでした」
エリーゼ(ちょっと、どうして話を合わせてるの。タルナーグって何なのよ?)
タリア「いいえ、無理からぬことです。昔に比べ、砂漠渡りのすべが知れ渡るようになって
西からの客人も増えたとはいえ、このようなお怪我をされるようでは」
セシル(逃げていいか……?)
ルーク「だ、大丈夫だから!あの鳥も追い払ってくれたし、悪意があるようには見えないよ」
カライス「……それはこっちが”タルナーグの物売り”だと思っているからかもしれません。
ルーク、ここは死の砂漠のただなかです。少しは警戒心を持ってください」
エリーゼ「ああ、それで彼女に話を合わせたのね。
こちらの素性を知ったら豹変するかもしれないから」
フェリシャ「他人の好意も素直に受け取れないなんて、冒険者も因果な商売ね」
アイリーン「あなたが来たとたん、鳥が逃げていったように見えたんだけど、一体どうやったの?」
タリア「この匂いを鳥が厭うので。
マハーア草から作った香によるものですが、村へ着けばお譲り出来るでしょう。
村にご用事だったのでしょう?私が案内(あない)いたします」
ルーク「村か……。どうするの?」
フェリシャ「いいんじゃないかしら。なるようになるわ」
エリーゼ「……本当にフェリシャは楽観的ねえ」
カライス「まあ、振る舞いに気を付けるに越したことはないですけど。
村に案内してくれるっていうなら、行くべきでしょうね。
期待されてる水準を遥かにに超えた成果で依頼達成したようなものですよ」
言われた通りアイリーンが首筋をたたくと、ヤタは勢いよく駆け出した。
風を切り、砂上を跳び、夜を駆ける。
全てを後ろにし進冒険者たちの行く手に、人里の気配があった。
村の門にかざされたかがり火が、夜闇を照らしている。
ゆらゆらとかすむ炎が、まだ見ぬ世界へ冒険者たちをいざなっているかのようだった。
昨晩、タリアに導かれるまま辿り着いた場所には、天幕が点在していた。
村と言われればそうかもしれない。
が、いかんせん暗すぎ、様子は良くわからずじまいだった。
そしてタリアが居住するという天幕に招かれ、今に至る。
フェリシャ「夜は気づかなかったけど、思っていたよりも賑やかな村なのね」
カライス「砂漠の真ん中に村があるなんて環境的に信じがたかったけれど……
成り立っているのはオアシスゆえ、ですね」
アイリーン「かつて聖北教会によって迫害され、住処を奪われた者たちの村……か。
少し見てまわって、暮らしぶりを観察させてもらおう。村人の話も聞きたいな」
村人にも話を聞いてみたが、過去の話についてはほとんど情報が得られなかった。
文字を書く文化を持たないため、文献なども残されていない。
なんでもマヒリヤという祈祷師が、昔のことに詳しいという。
村から離れた「神木」の元にいると聞き、一行はそこへ向かった。
2へと続きます。
そうして、あの村で起きたある騒動を話して聞かせた。
森の傍らのとある家に、美しい娘が住んでいた。
肌はあやめのごとき黒、髪はなお黒。
虫や獣に語りかけ、友さながらとする、
いささか風変りではあるが心根の優しい娘であった。
求婚する男は後を絶たず、娘はやがてそのうちの一人に嫁いだ。
だが、三年(みとせ)過ぎても若い二人が赤子の産声を聞くことはなかった。
娘は石女(うまずめ)であったのだ。
それに気づくや男は怒りに駆られ、うつむく娘を殴打した。
のみならず、夜が凍えた息を吹きかけ、人ならぬものがうろつく森に放り出した。
森に放り込まれた娘が、ふたたび男の前に姿を現したは、
七夜を数えたのちのこと。
青ざめた顔は死人差ながら、口をきくこともあたわず、そして身ごもっていた。
石女のはずではなかったか?
幾日も経たずに娘は死んだ。村人たちは娘の死体を取り囲み、囁きかわした。
たった七夜の間に、臨月の女と同じほど、腹が膨れている。
水も食料も持たぬ身で、荒れた森で生き延びた。
腹の中の子供は、人の子供でるはずがない。
では、何の?
「娘の腹を裂くと、赤子は生きていた。
母親に譲られた肌を持ち、母に譲られたとは思えぬ黄色い瞳で村人を見返した。
……つい最近の話さ。赤子は村人によって殺されたか、もしくは恐れられ捨てられたか……。
往々にして、辺境には我々の予想だにしないものが待ち構えているもんじゃ」
依頼人は、賢者の塔に籍を置く学者だった。
話すたびに肩をすくめるしぐさが、人を食ったような不快さを感じさせる男だ。
アイリーンが書を受け取り、頁をめくろうとすると、学者のやや高い声が水を差した。
「共通語の読み書きも難しい冒険者の方に冒険者の方に読ませようなどとは、
いやはや失礼しました。
私が代わりにお読みしましょう。翻訳に使ったメモがあればすぐですから。
――さて、メモはどこだったか?」
カライス「『聖北国教会歴二十六年赤の月、
トラキア西の未踏の砂漠地帯へ移民の集団が旅立った。
彼らは聖北教会による弾圧によって居場所を失い、
砂漠へ一縷の希望を持って旅立ったとされる。
その後の消息は一切不明……。』
移民の話は初めて聞きました。これは信頼に値する書ですか?」
――今回の依頼は、聖北教会の弾圧を逃れて
森から砂漠に移民した人々の調査。
情報源は確かだが、既にその地は途絶えていると見て間違いはない。
そこで、人が住んでいたという何らかの痕跡を見つけることが主になるだろう。
カライス「教会歴二十六年というと、
聖北による他教や異民族への弾圧がことさら激しかった時期ですね。
教会歴五十年の焚書事件を逃れた貴重な本のいくつかに、
水責めだの火刑だの、ひどい弾圧の様子が記されています。……」
エリーゼ「……何よ。これだから聖北は信頼できない、みたいな目は」
カライス「おや、よく分かりましたね。そこまで顔に出てましたか」
フェリシャ「不毛の砂漠に移民するなんてと思ったけど、
そんなにひどい弾圧の歴史があるならおかしくないか……」
アイリーン「(情報の出所もはっきりしているみたいだし、
依頼人も信頼……はしたくないけど、怪しい奴じゃない)
わかりました。この依頼を受けます」
フェリシャ「それにしても、依頼人はいけ好かない男だったわ。
賢者の塔っていうのはあんなのばかりなのかしら?」
アイリーン「そうだよね!今時、共通語の読み書きができない冒険者なんてそうそういないよ」
エリーゼ「研究ばかりしていると、自分が偉いと勘違いするんでしょ。
よっぽど依頼を蹴ってやろうかと思った」
カライス「あんなのどこにでもいる人種です。彼の御高説なんか、全く聞いてませんでしたよ。
いちいち気にしてたら、身が持ちませんから。
それに、この砂漠に消えていった民族……。どうなったか、私にも興味があります」
方位磁針を頼りに西に進むうち、砂漠に夜の帳が降りる。
急激に冷え込み、冒険者たちは慌てて依頼人に借り受けた装備に着替えた。
ルーク「今日は何の収穫もなし、か。まだ初日だから仕方ないよね」
エリーゼ「ちょっと確認。
5日かけて成果がなかったら、いったん引き返して補給……ってことでいいのよね」
アイリーン「うん。最初はもう少し広範囲に探索する予定だったけど遭難しそう。
このまま西に進路を固定した方が良さそうだね」
セシル「はは、カライスの目の方がずっとキラキラしてやがる」
アイリーン「さすが占星術師ね。普段よく見えない星も、ここからなら見えるかもね」
他愛のない雑談を交わした後、一行は明日に備えてテントで休んだ。
迎えた2日目の朝。一行はある深刻なトラブルに見舞われた。
セシル「方位磁針が狂ったのか?こんなところで?嘘だろ……?」
エリーゼ「衝撃を与えたりはしてない。さっきの突風の時だって、しっかり守ってたわ。
方位磁針が悪くなったんじゃない。このあたりの地理的な要因じゃないかしら」
フェリシャ「何の道標もないまま歩いたら、すぐに方角を見失うわね。
目印が一切ないから、まっすぐ進んでいるつもりでもいつの間にか逸れてしまう」
セシル「下手に動けば迷って死ぬな。……どうする?」
カライス「……ちょっと待ってください。夜になって星が出れば、分かりますよ、方角。
明るいうちはさっぱりですけどね。星の位置を頼りにすれば、大丈夫だと思います」
ルーク「ということは、夜しか動けないか……」
アイリーン「……。星の読みは確かなの?」
カライス「ええ。ゆうべ星空を眺めてて、これを見ながらでも進めるなって思いましたよ」
アイリーン「だったら、このまま夜を待って星が出たら東に引き返そう。
不安材料を抱えたまま、奥地へ進むのは危険だよ。いったん戻って、出直した方がいい」
こうして一行は日が暮れるのを待ち、夜に行動することとなった。
カライスから星の読み方を教わりながら、一行は東に進路を変えて進軍を続ける。
ところが進んだところで、今度は奇妙な鳥の集団に襲われる。
ルーク「ただの鳥じゃないよ、次から次へと降ってくる!」
フェリシャ「どこかに身を隠せるところはないの?」
カライス「駄目です……、あの鳥には目がありません。
鳥のくせに嗅覚が発達しているようです。臭いでこっちを追っています」
アイリーン「逃げても無駄、ってことね。だったら奴らが怖気づくまで、叩き伏せるしかないか!」
フェリシャ「無茶言うわね…… あれ、ちょっと待って!鳥たちの様子が……!」
セシル「うわ、な、なんで砂漠のど真ん中に女が!?」
フェリシャ「何かしら、あのふわふわしてる動物!可愛い!」
エリーゼ「フェリシャ、気にするところはそこじゃないでしょう」
ルーク「セシルも怖がらなくていいから。見たところ、悪い人じゃなさそう……かな?」
アイリーン「ええと……あなたは?」
フェリシャ「へえ、あのふわふわした動物はヤタっていうんだ」
エリーゼ「それどころじゃないわよ。マニの民、ですって?付近に集落があるの?」
ルーク「それって、依頼の件の砂漠に旅立った移民の末裔……?」
カライス「おそらくそうでしょう。言葉がまずまず通じますから。
元が近しい民族と、文化圏を同じくしていたことに間違いないでしょう」
アイリーン「どうやらあなたのおかげで助かったみたい。ありがとう。
でも、なぜあなたみたいな女性が一人で、この死の砂漠に?」
タリア「……死の砂漠。貴方がたのような、タルナーグの物売りの間で、
ここはそのように言われているのですね」
アイリーン「タル……え?なんていったの?物売り?」
カライス「あ…… いえ、誰しもがそんな風に言ってるわけじゃないんです。
私達はタルナーグではちょっとした有名人で。
私たちの成功を妬んだ商人が、悪しざまに言ったことが耳に残っていて。すみませんでした」
エリーゼ(ちょっと、どうして話を合わせてるの。タルナーグって何なのよ?)
タリア「いいえ、無理からぬことです。昔に比べ、砂漠渡りのすべが知れ渡るようになって
西からの客人も増えたとはいえ、このようなお怪我をされるようでは」
セシル(逃げていいか……?)
ルーク「だ、大丈夫だから!あの鳥も追い払ってくれたし、悪意があるようには見えないよ」
カライス「……それはこっちが”タルナーグの物売り”だと思っているからかもしれません。
ルーク、ここは死の砂漠のただなかです。少しは警戒心を持ってください」
エリーゼ「ああ、それで彼女に話を合わせたのね。
こちらの素性を知ったら豹変するかもしれないから」
フェリシャ「他人の好意も素直に受け取れないなんて、冒険者も因果な商売ね」
アイリーン「あなたが来たとたん、鳥が逃げていったように見えたんだけど、一体どうやったの?」
タリア「この匂いを鳥が厭うので。
マハーア草から作った香によるものですが、村へ着けばお譲り出来るでしょう。
村にご用事だったのでしょう?私が案内(あない)いたします」
ルーク「村か……。どうするの?」
フェリシャ「いいんじゃないかしら。なるようになるわ」
エリーゼ「……本当にフェリシャは楽観的ねえ」
カライス「まあ、振る舞いに気を付けるに越したことはないですけど。
村に案内してくれるっていうなら、行くべきでしょうね。
期待されてる水準を遥かにに超えた成果で依頼達成したようなものですよ」
言われた通りアイリーンが首筋をたたくと、ヤタは勢いよく駆け出した。
風を切り、砂上を跳び、夜を駆ける。
全てを後ろにし進冒険者たちの行く手に、人里の気配があった。
村の門にかざされたかがり火が、夜闇を照らしている。
ゆらゆらとかすむ炎が、まだ見ぬ世界へ冒険者たちをいざなっているかのようだった。
昨晩、タリアに導かれるまま辿り着いた場所には、天幕が点在していた。
村と言われればそうかもしれない。
が、いかんせん暗すぎ、様子は良くわからずじまいだった。
そしてタリアが居住するという天幕に招かれ、今に至る。
フェリシャ「夜は気づかなかったけど、思っていたよりも賑やかな村なのね」
カライス「砂漠の真ん中に村があるなんて環境的に信じがたかったけれど……
成り立っているのはオアシスゆえ、ですね」
アイリーン「かつて聖北教会によって迫害され、住処を奪われた者たちの村……か。
少し見てまわって、暮らしぶりを観察させてもらおう。村人の話も聞きたいな」
村人にも話を聞いてみたが、過去の話についてはほとんど情報が得られなかった。
文字を書く文化を持たないため、文献なども残されていない。
なんでもマヒリヤという祈祷師が、昔のことに詳しいという。
村から離れた「神木」の元にいると聞き、一行はそこへ向かった。
2へと続きます。
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